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キャプテン・フォンブロワーと司馬遼太郎

Twitterで話題になったので、以前に別の場所で公開した日記から転載しておきます。

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マニアには周知のことのような気がしますが、折角調べたので自分メモ。

嫁がパーキンソン会心の偽伝記『ホレーショ・ホーンブロワーの生涯とその時代』を読んでいたので、前から気になっていた「この本を読んだ司馬遼太郎が、ホーンブロワーを実在の人物と間違えた」という逸話の出典を探してみました。『司馬遼太郎が考えたこと8』新潮社に収録された講演「「庄屋の情報感覚」を排す」がこの話の出典なのは各所で紹介されていますが、どういう文脈で司馬氏が取り上げたのかを知りたかったもので。

講演は1976年5月に日本記者クラブので行われたもので、「坂の上の雲」執筆時の調査を回顧して日本人の情報収集・活用能力の弱さについて論じています。パーキンソン本は「キャプテン・フォンブロワーというイギリス帆船時代の最後の提督の伝記」として講演の枕に登場し、海軍についての資料を集めた際に入手した本として挙げられていました。

司馬氏はキャプテン・フォンブロワーが士官候補生時代の母親に宛てた手紙に着目し、少年が身の回りの出来事に留まらず、訪れた土地の社会情勢などを客観的にまとめて書き送っていることを紹介。「情報を送ることがイギリス人の民族性にまでなっているのだろうか」と続けて本題に入ります。なるほど、そういう流れでしたか。

偽伝記の刊行が1970年、「坂の上の雲」の連載が1968-72ですので、ちょうど新刊を入手して読まれたのでしょうか。訳本が至誠堂から出版されたのが74年なので、76年の講演でネタにしてしまったのは少々迂闊、とは思いますが、ここは海外文献もチェックしていたところに感心するところでしょう。あ、でもハヤカワの「海軍士官候補生」が1973年なのでやっぱり迂闊か?司馬さんハヤカワは眼中にないのね……。

ちなみに司馬氏のホーンブロワー評は「非常に軽い兵力を率いて敵を奇襲する、才能のある非常に面白い提督」とのことでした。
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ホーンブロワーには好意的ですが、元ネタのコクラン卿はあまり司馬氏の好みではなさそうな気がしてきました。元ネタそのままの俗物オーブリーになると、全然駄目でしょうね。

2010/04/01追記

日本記者クラブのサイトに同講演のPDFが公開されていたのでリンク。

司馬遼太郎「総会記念講演:庄屋の情報を反省する」1976

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コメント

こちらでは初めましてとなります。奥津城常世です。
ホーーンブロワーのシリーズの初訳作品は「海軍士官候補生」ですが、初出はハヤカワNV文庫では無く、筑摩書房の単行本シリーズ、世界ロマン文庫04「海軍士官候補生」となります。こちらも高橋泰邦氏訳で、ハヤカワ版はその文庫化といえます。ロマン文庫版の初出は確か1970年になるはずです。

投稿: 奥津城常世 | 2010年1月24日 (日) 20時13分

>奥津城常世様
世界ロマン文庫の件は完全に失念しておりました。フォローありがとうございます。
チェックしてみたところ1969年出版とのことですので、迂闊度少々アップですね。パーキンソン先生もしてやったり、というところではないでしょうか。
今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: N村 | 2010年1月24日 (日) 20時33分

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