First Battle of Keren : YSGA 2012/08/14
平日にも関わらず、YSGAでは北海道へ帰還する遠隔地会員f.sinoさん迎えて「羽田フライトまでゲームで送る会」なる無茶例会を開催。主賓以下の Strike of the Eagle(Academy Games) を尻目に、World at War 誌の最新作をプレイしてきました。
First Battle of Keren, Keren :East Africa, 1941 - World at War #25(→)
1941年のイタリア領エリトリア戦線。内陸の英領スーダンから紅海沿岸のマッサワへといたる街道上の要衝、ケレン峠をめぐる英伊両軍の攻防戦を扱った会戦/作戦戦術級ゲーム。日本語ではほとんど情報がありませんが、英語版Wikipediaには Battle of Keren として比較的まとまった情報が掲載されています。
さきに会戦/作戦戦術級と書きましたが、本作のスケールはWW2のゲームとしては少々独特です。ユニット規模は大隊と小さめの作戦級ですが、ヘクス径は200mと戦術級寄り。戦闘は隣接へクスへの白兵戦のほかに、同じく隣接へクスへの射撃が可能。また砲兵のみ射程無制限の砲撃が実施できます。一読したときは射程数へクスの重火器が存在しないことに面食らいましたが、双方とも植民地兵(英軍はインド師団)で装備がよろしくないため、歩兵戦と砲兵戦にバッサリ区分けしてしまっている模様です。おかげでルールは非常に簡潔にまとまっており、システムとシチュエーションがマッチした好例と言えるのではないかと思います。また練度を考慮してか、砲兵は直接照準射撃のみが可能。射点をもとめて稜線に野砲を押し上げるという、時代錯誤な光景も見られます。
#余談ですが、本作には1ユニットのみ戦車が登場します。しかし単に強力なユニットというだけで、やはり射撃は隣接へクスに制限されています。2ポンド砲の Matilda II だから?
そして本作の一番の特徴となるのが、山岳地を反映した補給線の距離制限に関するルールです。各ユニットの補給線は通常状態で50MP, 戦力半減となる減少状態で100MP以内で補給源まで到達しなければなりません。通常のゲームであれば50MPくらい無制限のようなものですが、本作は盤上のほとんどが2-6MPの消費が必要となる山岳地帯となっているため、この縛りが非常に重要です。両軍とも戦場を横断する稜線斜面までは辛うじて通常の補給が可能ですが、これを乗り越えると途端に補給状態が悪化。弱体化して逆襲を受けやすくなります。勢い進撃路は戦場中央の峠道へと誘導されますが、ここは左右の稜線から打ち下ろしコラムシフトの野砲が降って来る死地。攻める英軍には頭の痛いところです。また補給源までのMP確認にも閉口しましたが、今回は盤上にマーカーを配置して対処。これはいっそマップ上にMPラインを印刷してしまっても良かったのではないかと思います。
今回プレイしたのは、失敗に終った第1次攻撃を扱ったシナリオ1。担当は守る伊軍を syphalias氏、英軍がN村。英軍は峠の向こうの Keren 市街まで連絡線を打通できればサドンデスですが、これはまず不可能。峠周辺の制高点の支配と、ユニットの除去によるVPで勝敗が判定されます。
攻める英軍は、まず中央から右翼で大きく前進。峠手前に張り出した Fort Dologorodoc 以下の独立峰の包囲を目論見ます。英軍の意図を悟ったイタリア軍は、小競り合いのすえに主稜線まで撤収。これで中央の峠道を確保した英軍は一気に反対斜面へと突破して、峠出口に橋頭堡の確保を試みます。これに対して伊軍は、平野に展開した砲兵部隊の集中砲火により、突出した英軍先鋒を痛打して砲撃のみで除去。反射面陣地の実地教育を受けた英軍は、稜線の影へと一旦退避します。
英軍の次なる目標は、左翼で峠道を見下ろす Mt.Sanchil の制高点。手前の Cameron Ridge に並べた砲兵で陣地を制圧すると、密かににじり寄っていた歩兵部隊が電撃占領。ここまででイタリア軍に与えた損害と占領した拠点により、英軍は規定の勝利得点をギリギリ達成。このままゲーム終了まで逃げ切れば勝利です。
続く終盤は、両軍とも反斜面に篭もりながら、隙を見せた部隊に対する砲撃戦を展開。これで両軍とも若干の損害が発生し、1VPを争うシーソーゲームが続きます。最終的に英軍2VPのリードで最終ターンへ。対するイタリア軍は、右翼稜線の背後に騎兵部隊を展開。稜線を乗り越え、乾坤一擲の騎兵突撃に望みを託します。英軍の防御射撃をかいくぐった騎兵部隊により、イタリア軍は2箇所で突撃の実施に成功。両方とも成功すれば伊軍の勝利でしたが、結果は惜しくも1部隊の除去(2VP)のみ。1VPの差で英軍の勝利に終わりました。プレイ時間は5時間弱。
雑誌付録でマイナーの戦術級、デザイナーは新人と地雷要素満載。双方ともどんな魔界ゲームになるかとヒヤヒヤしながらプレイに挑んだのですが、意外にもプレイアブルで1点を争う好ゲームとなったのは嬉しい誤算でした。引き続き本戦となる第2次攻撃シナリオもプレイしてみたいところです。
個人的には平行してエリトリア戦役全体を扱った作戦級の Bloody Keren(Wargamer#59)のルールも和訳済。エリトリア戦役がマイブームとなっており、こちらも併せてプレイしてみたいと考えています。
プレイ後は Strike of the Eagle を終えた会長のプッシュにより「秘宝の番人:ゾンビゲーム」(エポック)を閉会まで。なんでも鈴木銀一郎氏デザインだそうで、帰宅後に確認したところ、確かに同人GJ最終号の座談会で言及されてました。結果は第三階層で時間切れ終了。
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