Andean Abyss 2戦 : GCS 2012/09/29,30
今月の坂戸のメインゲームは、非正規戦ゲーマー期待の新作Andean Abyss。
相変わらず難解なVolko Ruhnkeのルールでしたが、作成中の和訳ルールを旅団長様よりお借りすることができたため、無事にプレイにこぎ着けることができました。前作のLabyrinthをはじめ、いつも和訳ではお世話になります。
Andean Abyss - GMT Games(→)
対テロ戦争を扱った話題作、LabyrinthでデビューしたVolko Ruhnkeの第2作(*)。COINシリーズと銘打たれた20世紀のゲリラ戦を扱ったシリーズの第1作という位置づけですが、既にキューバ革命を扱った第2作Cuba Libre, 911テロ後のアフガニスタンの第3作A Distant PlainもP500入りしており、GMT社の同シリーズに対する期待がうかがえます。
(*)2001年にWilderness Warがありました。これは失礼。
というわけで「アンデスの深淵」です。本作は1990年代の南米コロンビアを舞台に、コロンビア政府、FARC(コロンビア革命軍:左派ゲリラ)、AUC(コロンビア自衛軍連合:右派ゲリラ)、カルテル(麻薬組織)の四つ巴の内戦がテーマとなります。不平等な勢力にそれぞれ固有の勝利条件とアクションが与えられており、ゲームのジャンルとしてはHere I Standに代表される歴史再現系マルチの系統ということになるかと思 います。
そしてゲームの展開を左右する肝心の勝利条件ですが、政府とFARCはエリアの民衆支持をめぐって直接対峙。これにFARCとの勢力差が勝利条件となるAUCがFARCに噛みつき、カルテルは蓄財と拠点数(麻薬農場や精製施設)で独自の道をゆく、という関係となっています。また政府がカルテルを叩くと、麻薬撲滅に寄与したとして海外援助を 獲得することが可能。さらにカルテルだけが生産できる麻薬カウンターは、資金への変換や追加行動を可能とする重要なアイテムであるため、各派の標的や取引材料ともなります。このあたりの構図は「書き逃げ旅団」様の相関図が非常にわかりやすいです。
続いてゲームシステムですが、本作はカードをプレイしながらゲームが進行するものの、一般的なカードドリブンのようなプレイヤー毎の「手札」は存在しません。代わりにターン毎にデッキから1枚のカード、および翌ターンにプレイされるカードが提示され、これを全プレイヤーで共用するシステムとなっています。
各カードにはイベントとこのターンのプレイの優先順位が書かれています。この優先順位により、上位派閥からイベントをプレイするか、派閥ごとのアクションを実施するかを選択します。そしてここでジレンマとなる のが、「各ターンにプレイできるのは2派閥のみ」「イベントを使用できるのは1派閥のみ」「プレイした派閥は翌ターンのプレイ権を失う」という制限です。
写真の例は、政府軍の空輸能力を改善する「ブラックホーク」と、臨時収入を与える「戦争税」のカードです。カード上辺の4色シンボルは、このカードの派閥優先順位(左優先)。政府プレイヤー(青)であれば、このターンの第1プレイヤーとして固有アクションまたはイベント「ブラックホーク:アメリカから新型ヘリ受領」をプレイするか、パスして翌ターンの第1プレイヤーとして「戦争税:防衛予算で装備更新」を確保するかの選択を迫られることになります。もちろんパスしたカードに応じて「ブラックホーク:新型ヘリ受領できず」や「戦争税:中間層の不満」の各イベントを他派閥にプレイされてしまうかもしれません。
こうしたカードを共有するシステムであるため、カードドリブンのゲームでありがちな「こんな効果があるなんて聞いてないぞ!」が発生しない点は、非常にインストのしやすいゲームでした。また各派閥のアクション (通常オペレーション4種+特別アクション3種)もさほど難しいものではなく、ゲーム添付のプレイエイド(各派1ページ)だけで簡単に処理できます。
またデッキには通常のイベントカードに加えて、管理フェイズに相当する「プロパガンダ・カード」が4枚含まれています。このカードが引かれると、プレイを一時中断してサドンデス勝利判定が実施されます。いずれの派閥も達成していなければ、収入やエリアの支配変更を確認してプレイを続行。4枚目(ショートゲームなら3枚目)のプロパガンダが引かれたところでゲーム終了、勝利判定となります。デッキの合計は76枚。実際には60枚弱のカードが使用されますので、ルールは軽いですがプレイ時間は結構かかります。今回は土日ともショートゲームでしたが、いずれも午後一杯のプレイとなりました。
というわけで、Labyrinth同様にユニークなルールを把握するまでは大変ですが、実際のプレイは難しいものではありません。歴史的フレーバは盛り沢山で、勝利条件の異なる非対称ゲームにも関わらず、終盤の1点の攻防は熱いです。難点は意外に長いプレイ時間と、コロンビア内戦というテーマについてくる奇特なゲーマが複数必要になる点でしょうか。もちろんラテンアメリカ友の会のメンバーには、文句なしにお勧めです 。
まずは土曜の輪講3人戦。4人未満のプレイでは、足りない派閥の行動をダミープレイヤールールで処理するシステムとなっているのですが、今回はそこまで読み込んでいなかったため、3人目(N村)はAUCとカルテルの2派閥持ちとなるオプションルールの方を使用しました。
このプレイでは、政府が主導権を握って地方のFARC支配地を攻める展開となり、防戦に回ったFARCは伸び悩み気味。しかし中盤に登場したイベント「マドリッドの支援者:EUが復興を重視」により、政府は地方での軍事活動を封じられてこれまた伸び悩み。ここでメキシコとの麻薬組織で稼いだ資金で買収攻撃を仕掛けるカルテルと、政府軍に代わってFARCを狩りたてるAUCのコンビがじわじわと浮上。3枚目のプロパガンダが引かれ、カルテル&AUCの判定勝利となりました。インスト込みのプレイ時間は5時間ほど。
各派とも試行錯誤のグタグタプレイでしたか、初見の感触は良好。色々やりようがあったんじゃないの?と感想戦も花が咲きました。
翌日曜日は4人戦。弱小のAUCとカルテルは経験者が担当したほうが良かろうということで、前日にプレイしたsyphalias氏とN村がそれぞれ担当。初プレイの帝王・親方日の丸両氏に政府軍とFARCを担当していただきました。
こちらのコロンビア政府は1手目で大量の資金を投じ、全軍隊・警察を動員するという思い切りの良いプレイを敢行。前日の経験から、政府の足を引っ張るには人口の多い都市部への浸透が不可欠と目論んでいたゲリラ各派の目前に、政府軍キューブの山がそびえ立ちます。そして余剰兵力から強襲部隊を編成した政府軍は、アメリカから受領したブラックホークで国内を転戦。ゲリラ両派は強襲困難なアンデス山脈へ、カルテルは農場をアマゾン奥地へと避難させ、政府の資金切れを待つ事となりました。こうしたゲリラ各派の動向に対し、政府軍も本腰を入れたFARC討伐作戦を開始。アンデス山中に大規模な討伐隊を送り込み、左派ゲリラ最大の拠点を壊滅させるべく動き出します。
このFARC最大の危機を救ったのは、コロンビア政府の政権交代。政府軍の強襲作戦目前に引かれたプロパガンダカードにより、融和派のPastranaが大統領に就任。FARCの籠るHuilaがFARC解放区に指定され、南部諸都市に隣接するエリアに政府軍の侵入できない聖域が出現してしまいます。この通称「アンデス山岳ベース」に集結したFARCを中心として、ゲリラ各派は反コロンビア政府で連合。都市を基盤とするAUCが突破口を開き、カルテルに資金援助されたFRACゲリラが浸透。政府の支持基盤である都市部の支配を切り崩します。
さすがに3派連合による攻勢は強烈で、次の政権交代でFARC解放区が解除されるまで、政府軍は防戦一方。代わってFRACが大きく勢力を伸ばしたため、カルテルは資金繰りの苦しくなった政府へと提携先を乗り換え。左右ゲリラへの反撃作戦を支援します。こうして復活した政府軍により、FARCの勢力も次第に後退。さらには都市部に再建したカルテル拠点も、ゲリラと一緒に政府軍に狩られるという微笑ましい一幕も出現。内戦は混迷を深めます。
政府と決裂したカルテルは、麻薬取引で稼いだ豊富な資金力で、破壊されるはしからジャングルの奥地に農場を再建。さらに最終プロパガンダを見据えて、各派の引っ張り合いが開始されます。またこのタイミングでイベント「携行対空ミサイル」が発動し、地方における政府軍の空輸・航空攻撃・麻薬組織狩りの各アクションが封じられるという僥倖が発生。これにより辺境農場の安全を確保したカルテルの勢力が相対的に浮上。折よく登場した3枚目のプロパガンダにより、カルテルの勝利でゲーム終了となりました。プレイ時間はインスト込み6時間ほどでした。
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