Greenland : 家庭内 2014/10/26

無法者の赤毛のエイリークがこの氷に覆われた不毛の島を誤って「グリーンランド」と呼んでから2世紀ののち、10人の痩せ衰えたスカンジナビア人たちが小舟からこの積雪に上陸した。これは彼らが知る最も厳しい冬の明けた5月の事だったが、数か月後には保存してきた食料も飼料も尽き果てた。彼らはこの年の最初の獲物として、氷上で親からはぐれた、あどけない瞳のタテゴトアザラシの子供に狙いを定めた。しかしそこで彼らが得たものは、チューレ人の矢の雨だけだったのである。このスクレリング（これはチューレ人とチューニット人に対しするヴァイキングたちの蔑称である）たちは、人口も多く北極圏におけるサバイバル技術にも長けていた。もしチューレ人がスカンジナビア人とチューニット人を撃退することができれば、彼らはグリーンランド唯一の支配者となることができるのである。

- Greenland: INTRODUCTION

Greenland: A cardgame of survival - Sierra Madre Games(→)

こちらはVASSAL版のスクリーンショットより。

Sierra Madre Gamesの今年の新作。ヴァイキングことノース人と、イヌイット系のチューレ人がグリーンランドに植民した11世紀から、チューレ人の一人勝ちに終わった15世紀まで。先住民族チューニット人（ドーセット文化人）を加えた三つ巴のグリーンランド開拓・抗争史を扱ったカードゲーム。

毎ターン、各部族はグリーンランドの生態系として並べられた「ホッキョククジラ」や「ゼニガタアザラシ」「ツンドラトナカイ」などの生態系カードに、ワーカーである「ハンター」を派遣。狩猟ロールを実施し、成功した場合は各獲物に対応する人口増加に加えて、脂肪や木材等の「エネルギー」、セイウチの牙や白熊の毛皮など貴重品「牙」、鉱物資源である「鉄」などの資源を獲得。これらを使用した拡大再生産を目指します。

ただし地球的な寒冷期に突入したグリーンランドの環境は苛酷で、ゲームの進行に伴って寒冷化や乱獲によりバイオームは次第に縮小。ゲームのメカニズムは拡大再生産ですが、右肩下がりのリソースをめぐる、三つ巴のサバイバルが繰り広げられます。

またワーカーの配置先としては、祈祷師や船乗りなどプレイヤーに特殊能力をもたらす6種の「長老」。他の「部族の娘」と婚姻して部族固有の特殊能力をもたらす「婿」。さらに資源豊富ですが危険な先住民の住む新天地「マルクランド」「ヴィンランド」への「植民者」といった選択肢も用意され、グリーンランド史を彩ります。

最終的な勝敗は、ゲーム終了時の人口によるVP制。ただし部族の信仰が「多神教」である場合は狩りで獲得される「トロフィー」が、「一神教」である場合は「牙」「鉄」の各資源がボーナスVPとなります。ゲーム開始時のすべてのプレイヤーの立場は多神教です。この多神教から一神教への改宗は一方通行で、自発的に改宗する場合は部族の長老が一時的にせよ全滅している必要があります。長老は常に保守派なのです。

従って序盤は狩りによるトロフィー獲得でVPを稼ぎ、このレースから脱落したプレイヤーが、事故や「追放」アクションにより自発的に長老を一掃して一神教に改宗。一神教での資源VPによる勝利を目指すことになります。さらに一神教の長老のアクションには、他部族に伝道師を派遣し、強制的に一神教に改宗させるというはた迷惑なアクションが用意されています。これで改宗させてしまえば、相手のトロフィーVPはすべて無効です。

というわけでグリーンランドの資源をめぐる物理的な抗争に加えて、誰が抜け駆けして一神教に走るのか、どのタイミングで改宗するのかがゲームの争点となります。

今回は作成中の和訳確認のため、家内を徴用しての家庭内2人プレイ。家内がノース人を、Ｎ村がチューレ人を担当。ついでにダイスゲーのため、ムスメがダイス振り担当で参戦。背景のアレはスルーするのがマナーです。

結果はおおむねチューレ人が優位にゲームを進める中、終盤にノース人がほぼ全勢力を率いて新大陸に移住。ここで鉄資源を掘りに掘り、最終ターンに生き残っていた最後の長老を追放して一神教に改宗。オルカまで狩りつくしてトロフィーで圧倒的優位に立っていたチューレ人を僅差で上回り、西欧文明の勝利に終わりました。プレイ時間はインスト込みで1時間半ほど。