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District Commander : GCS 2019/10/26,27

今月はCOINテーマのベテランデザイナーより、最新作の人柱会を開催。

District Commander - Brian Train()

Brian Trainが長年手掛けている、対叛乱作戦システムの最新作。テーマは都市部における反政府活動とその鎮圧作戦で、基本システムと追加モジュールにより様々な戦場を再現します。また叛乱全体を扱うのではなく、両陣営ともタイトル通り「地区司令官」の立場であることが特徴です。今のところ以下の2作がリリースされています。

District Commander ZNO(Zone Nord Oranais) - Brian Train()

Dc-zno-2019102615a

舞台はBrian Trainのライフワークでもあるアルジェリア戦争。オラン北東、モスタガヌム市南東部の丘陵地帯における1958-59年の紛争を扱います。独自要素として住民の強制移住など、50年代らしい「汚いCOIN」が戦われます。
こちらは現在もデザイナーのブログで公開されているDTP版です。

District Commander Maracas - Hollandspiele()

Dc-m-2019102710a

2010-20年代の架空国家、ヴァーチャリア首都であるマラカス地区における対反乱作戦。アルジェリア戦争と比較すると格段に人口も多く、物理的な紛争よりも自派コミュニティの育成に比重が置かれています。都市部らしくノンプレイヤー勢力である犯罪組織や、第3派閥の民兵も登場します。
こちらは先日、Hollandspieleからボックス版が発売されました。今回プレイに使用したのは、以前にデザイナーのブログで公開されていた、DTPバージョンのコンポーネントです。

◆ゲームシステム

ルールを一読すると、アンダーグラウンドボックスとインフラユニット、正規軍と準軍事部隊(民兵、警察、ゲリラ)の区分、隠匿配置される叛乱軍とその正体を暴くパトロールアクション、過剰攻撃によるエリアの荒廃、正規軍の分散守備・戦力集中のモード変換など、COINシリーズほかBrian Trainが過去に手掛けたゲームから借用されたルールが散りばめられています。まさに同氏の対叛乱作戦システムの集大成、という格好です。

メインエンジンは戦術ポイント(TP)を消費してのスタック単位の活性化システム。叛乱側が指定したエリアが活性化され、この時点でTP残量の多い陣営が活性化権を獲得。ひとつのスタックを指定し、パトロール、攻撃、待ち伏せ、移動、民兵のリクルート、インフラの建設・破壊などのミッションを、ミッション毎にTPを消費して連続して実施。該当スタックの活性化が終了したら、その時点のTP残量の多い陣営が次のスタック活性化権を獲得。以下すべてのスタックが活性化を終えるか、双方がパスしたら該当エリアにおける活性化は終了。ふたたび叛乱側が未活性エリアを指定し、全エリアの活性化が終了するまでこれを繰り返します。

また本システムではダイスを一切使用せず、ランダム要素の絡む判定にはユニットの能力値に対応した修正値の記載された「チャンスチット」と呼ばれるチットを使用します。両プレイヤーはターン開始時にこれを指定数引いておき、攻撃などでユニット能力値の比較をおこなう際に使用します。ターン開始時に追加リソースの書かれた手札を引いておき、これをミッション実施毎に切ってゆくイメージです。また各プレイヤーには、ブラフとして何度でも使用できる「修正値なし」のブランクチットも与えられています。

ゲームの勝敗は、インフラを含む各種敵ユニットの撃破や、エリアの支配による勝利得点により判定されます。ここで両陣営にはそれぞれ複数の「戦略」が用意されており、選択した戦略により得点方法の配分が異なります。エリア支配を優先する戦略、準軍事部隊の撃破を優先する戦略、といった具合です。この戦略は基本的に固定ですが、「インぺリウム」のように上級司令部に「上申」をおこなうことで変更することも可能です(上申では増援や追加TPの要求が可能。ちなみに上申に失敗した場合、もちろん部隊やTPは引き抜かれ、上級司令部がランダムに選択した戦略が降ってきます)。またこの戦略と勝利得点は秘密裏に管理され、指定の得点を達成した時点でサドンデス終了となります。

◆感想戦

というわけで旧作の手堅いルールを組み合わせ、ユニークな活性化エンジンに隠匿勝利条件と、面白そうなルールを組み合わせた期待のシステムなのですが、実際にプレイしてみるとどうにもかみ合わせが悪い。特にプレイヤーに配られるチャンスチット枚数と、戦略と得点の隠匿ルールの組み合わせに難があります。

デザイナーの意図としては、敵ユニットの動向から相手の戦略を推測し、それを妨害するよう立ち回れということになります。もちろん敵ユニットに対するアクションには、相応のチャンスチットとTPの割り当てが使用が必要です。しかし毎ターンのチャンスチットの配分は5枚前後しかありません。

相手の得点状況は隠匿されていますので、敵が優勢なのか苦境にあるのかすら見当がつきません。プレイヤーの心理としては、有効か定かではない妨害行為より、自陣営の得点にリソースを割きたいという気分になります。そしてなまじ棲み分けが可能なマップが提供されているため、両陣営が自派の育成や地域支配の確実な得点にのみ苦心する、インタラクションの薄い2人ソロプレイ状態に。こうしてどこが山場だったのかすらわからず、いつの間にか一方のプレイヤーが勝利しているという、なんとも微妙な展開となってしまいます。ここで両者の対立を煽るようなギミックが仕込まれていればまだ何とかなるのですが、シナリオは基本的にセットアップのユニット数を指定するだけのサンドボックスです。ここは手を抜いてほしくなかった、というのがプレイしての感想です。

とはいえ個々のパーツとしては、敵を捜索し、攻撃し、敵のコミュニティ(インフラ)を破壊したところで自派を固め、守備隊(民兵)を育成してゆくという対叛乱作戦の基本エンジンは整っています。上記の問題についても、単に勝利得点を公開にして双方の進捗を競わせる、チャンスチットの配分を増やして敵に絡みやすくする、などの簡単な変更で改善することが可能です。ローカルルールで対処することも可能ですが、シリーズ化が予定されているシステムですので、ぜひとも今後のバージョンアップに期待したいところです。

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