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Stationfall : ゲームレビュー

Bios: Mesofaunaと併せて今秋にリリースされた待望の新作が、師走の埼玉にも到着。製品版のプレイは未着手ですが、すでに人柱会ではテストプレイ・キットでプレイを重ねており、面白さは確認済み。ようやくの製品版の登場となりました。

Stationfall - ION Game Design ()

デザイナーはMatt Eklund。さる企業の極秘研究所がおかれた地球低軌道の宇宙ステーションで、突如異変が発生。大気圏に墜落して崩壊するまでの13分(ターン)を舞台した正体隠匿ミッション達成ゲーム。そこに毎回ランダムな「X計画」(暴走ロボット、生物兵器、等)が乱入してドタバタする、というのが基本プロットです。プレイヤーは1-9名で、ソロプレイや少数の場合にNPCプレイヤーを動かす「ボット」ルールも収録されています。

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◆多彩なキャラクターと勝利条件

ゲームに収録された27名のキャラクターから、セッションにはランダムに選択された12名が登場。これらはすべてユニークな特殊能力と得点方法(勝利条件)が設定されています。ここから担当キャラクターが秘密裏に割り振られ、それぞれの勝利条件に応じた得点獲得を目指してプレイ。ゲーム終了時に全員の正体を明かし、最も得点の多いプレイヤーが勝者となります。

たとえばボックスアートに描かれている知性化チンパンジー、アストロチンプの勝利条件は「自分の脱出で得点」「脱出時にブリーフケース(重要書類)、アーティファクト(謎の異星遺物)、銃を所持していればそれぞれボーナス得点」といった内容です。要するに金目の物をつかんで逃げだせば良いわけです。物騒な例では、ステーションを襲撃してきた宇宙海賊の「自分の脱出で得点」「ブリーフケースを所持して脱出するか、ゲーム終了時にブリーフケースが宇宙にあればボーナス得点(海賊船が回収)」「ゲーム終了時に宇宙にいる人間ごとにボーナス得点」といったものも。重要書類を回収できれば大成功、ステーションから逃れてきたクルーを海賊船に収容してしまえば、身代金が稼げてなお結構、という感じでしょうか?

参考までに、以下のツィートからのツリーで、登場する全キャラクターの概要を紹介してあります。

 


◆「クレムリン」方式

実際のプレイでは、この担当キャラクターに限らず影響力を置いた任意のキャラクターを動かすことができます。もちろん勝利条件が「本人のステーションからの脱出」であれば、最終的に担当キャラクターが動かざるを得ません。しかし例えば前述の海賊担当プレイヤーであれば、自分の正体は隠したままチンプを装ってブリーフケースを持ち出し、これを宇宙に放り投げても得点できるわけです。もちろんチンプの担当プレイヤーが存在すれば、自分の得点となるブリーフケースを手放すことは抵抗するでしょう。ならばエアロックに海賊を待機させておき、念のためチンプを始末して……悪だくみの始まりです。またプレイ中に正体を明かすことも可能で、この場合は勝ち筋が他のプレイヤーに公開されてしまう代わりに、他のプレイヤーが操作できない専用キャラクターとなります。

◆「プロジェクトX」

さらにこの秘密研究所では「プロジェクトX」と称する極秘研究が行われています。この研究内容は「戦闘用肉食生物」「暗殺ロボット」「謎のエネルギー生命体」など全8種類。ゲーム開始時に伏せた状態でランダムに選択され、一定の条件で「プロジェクトX保管庫」からリリース。それぞれ設定された振り付けでステーションを徘徊し、ゲームを混乱させることになります。基本的にプレイヤーを阻害する要素ですが、キャラクターによっては、この開放が勝利条件である場合もあります。「実験体をステーションに解き放て!」というわけです。

◆脱出ポッド

本作の舞台は墜落中の宇宙ステーションであるため、単にステーションの外に飛び出しただけでは「脱出」することができません。脱出するためには、ステーションに備え付けられた3機の脱出ポッドに搭乗し、ポッドが射出される必要があります。しかしこのポッドは「退船命令」が発令されていなければ起動しない安全装置が掛けられています。順当に進めば最終ターンに「退船命令」が発令されるのですが、そんなものを悠長に待つわけにはいきません。

この早期発令には、オフィサー資格を持つキャラクターがブリッジで警報を出す、ステーションが致命的な損傷を負う、「X保管庫」が解放される、などのいくつかの方法があります。どのキャラクターを操り、どうやって退船命令を発動させるのか?そもそも勝利条件に脱出が必要なのか?脱出が必要ない、破滅願望的な勝利条件を持つキャラクターも複数存在します。このあたりの「誰が引き金を引くか?」も重要な駆け引きとなります。

◆「無実」「容疑者」「有罪」

先のチンプと海賊のように、キャラクター同士の勝利条件の齟齬からゲーム中は様々な対立が生まれるのですが、その際に重要になるのがプレイヤーの有罪ステータスです。ステーション内の監視カメラ環境下でクルーを攻撃したプレイヤーは、このステータスが「容疑者」となってしまいます。これだけでは「脱出中は色々あったらしいが大変だったな」と不問にされるのですが、警備システムのログデータ「エビデンス」が作成されると話が変わってきます。万が一このデータが、通信室から地球上の会社上層部に送信されると「容疑者」ステータスの全プレイヤーが「有罪」となり、得点にかかわらず敗北となってしまうのです。

もちろん対抗策も存在し、自ら率先して「エビデンス」を提出したプレイヤーは、自分だけステータスを「容疑者」に戻すことができます。警備ログを都合よく改ざんしたのか、司法取引に応じたのでしょう。そして監視カメラの死角で事におよんだり、警備システム自体をダウンさせてしまえばそんな心配はありません。証拠は残さず立ち回りましょう。

◆すべては相互作用

長々とゲームのフレームについて解説してきましたが、実際のプレイは非常に単純です。手番の最初に影響力を追加配置したのちに、影響力首位のキャラクターの一人を活性化し、1回または2回のアクションを実施するだけ。アクションも「移動」は1エリア移動するだけ、「攻撃」であれば条件の合う対象が行動不能になるといった具合で、行為判定もなくランダム要素は一切ありません。コンポーネントには多数のカードが収録されていますが、すべてキャラクターの状態表示として場に公開されるもので、隠匿要素はプレイヤーの正体カードのみ。ランダムなイベントなどもありません。すべてのドラマはプレイヤー/キャラクター間の相互作用から生み出されます。

このようにシンプルなシステムの上に、多数のユニークキャラクターの特殊能力と勝利条件が山盛りされている格好です。動かすだけなら簡単ですが、全キャラクターの情報を把握してからが本作の本番。本作を「ヘビーゲーマー向けのパーティーゲーム」と評した海外のレビューがありましたが、まさにそんな内容でした。

こちらはTable Top Simulatorでのテストプレイより。

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