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Littoral Commander : SoGC 2023/05/20

「Littoral Commander」は、海兵隊がFD2030の中核的な理念の探索、テスト、学習、発展を可能にする知的なサンドボックスとして設計された。海兵隊は将来どのように戦うのか-「Littoral Commander」の核心はここに置かれている。
Littoral Commander, ルールブック冒頭より。

Littoral Commander: Indo-Pacific - The Dietz Foundation ()

アメリカ海兵隊が現在進めている再編計画「フォース・デザイン2030」をもとに、近未来の東アジア沿岸地域におけるアメリカ海兵隊沿岸連隊(MLR)と人民解放軍海軍海兵隊(PLANMC)との架空戦ウォーゲーム。デザイナーは近年のアメリカ軍におけるボード・ウォーゲーミング振興のキーパーソンのひとりであるSebastian J. Bae。本作は海兵隊出身の彼が、古巣の新たなドクトリン教育のために作成したウォーゲームなのです。。

Lc-2023051205a

舞台として用意されたのは、20kmヘクスで描かれたフィリピン北部、マラッカ海峡、琉球諸島、そして台湾の4枚のマップ。一見すると激しい空海戦がプレイされるのではないか?という舞台設定ですが、本作のメインとなるのは小隊ユニットの海兵隊地上部隊。これを新たなドクトリンに従った小規模な諸兵科連合部隊として島嶼部に分散配置し、このネットワークにより侵攻してくる陸海軍部隊に対して接近阻止・領域拒否(A2/AD)をくり広げる……というのが本作の基本構造となります。このため登場する艦船ユニットも、海兵隊とタスク・フォースを組んで支援する水上艦のみ。その他の現場指揮官の権限をこえた空母機動部隊や航空部隊は、もろもろの戦略・戦術的アセットとともに「統合能力カード(JCC)」にまとめてしまう潔さ。このあたりの割り切りと視点の明確さはなかなかの力量です。

肝心のゲームシステムの方は、両陣営が交互に活性化する「タスク・フォース」ごとに、アクションポイント(AP)を支払いスタックを活性化し、アクションさせるのが基本エンジン。アクションは「移動と戦闘」「移動と隠匿」「移動と補給」「JCCカードの使用」と大変にシンプルです。

戦闘は同一ヘクス同時射撃(地上戦)か、射程内の一方的攻撃(長距離攻撃)で、それぞれ「1d20で攻撃力以下で1ヒット」とこれまたシンプル。そしてここで重要なのが、ほとんどのユニットの耐久力が2点であるのに対して「攻撃のダイスは使用した弾薬の数だけ振れる」という恐ろしいルール。少ないロケット砲でも3弾薬程度、DDGの対地ミサイルでは10弾薬以上。もちろん攻撃力以下が出た数だけヒットが得られ、共同攻撃も可能ですので、攻撃側が後先を考えなければ防御側は容易に撃破されます。

となると防御の鍵となるのが隠匿面のルール。ユニットは隠匿面で配置され、この状態のユニットには長距離攻撃を撃ちこむことができません。通常のアクションの際に、隣接する1ヘクスの敵ユニットを偵察して公開することができますが、この間合いではお互いのめくり合い。いかに味方を暴露しない方法で敵を偵察してゆくか?偵察衛星、ドローン、時にはソーシャルメディアの情報まで。JCCで提供される、現代戦でお馴染みの偵察アセットの有無は非常に重要です。

また偵察以外にも、後述の迎撃を含む戦闘実施でユニットは暴露されます。もちろん公開されば長距離攻撃の目標になってしまいますので、攻撃・迎撃(公開)←発見!長距離攻撃←発見!長距離攻撃←発見!以下略というカウンターバッテリーが連鎖します。相手を発見した場合でも、うかつな位置取りやタイミングで戦端を開けば無傷ではすみません。

そして戦闘の鍵となるもうひとつの要素が、対空部隊による迎撃です。こちらは迎撃範囲内のヘクスが長距離攻撃を受けた際に、弾薬を消費して迎撃判定をロール。攻撃と同様に、成功した数だけヒットをキャンセルする効果を持ちます。数へクスの迎撃範囲を持つ広域SAMや、10ヘクスにもおよぶイージス艦の傘は、それだけで戦況を左右する存在です。こうした対空ユニットは、防御側にとってはまさに守護天使ですし、攻撃側であればSEAD/DEADの手配に頭を悩ませることになるでしょう。そしてウクライナ戦争の話題でもおなじみのように、現代戦ではすさまじい勢いで消費される弾薬の供給が極めて重要です。

こうなると、小規模ながら対艦、対空、護衛の海兵隊歩兵の一通りの要素が揃った沿岸部隊が、相互支援可能なネットワーク状に展開する海兵沿岸歩兵のコンセプトが効いてきます……というより、このコンセプトを内外に宣伝、教育しようというのが本作の目的です。競技用ゲームとしては荒いところがあるものの、TTX(机上演習)のサンドボックスとしては、製作者の伝えたいテーマがストレートに伝わる大変面白いパッケージでした。

というわけで、本作の解読中ツィートと、Forger氏との人柱対戦レポートはこちらから。まだまだフィリピンから出ておりませんので、引き続き人柱をお待ちしております。

◆中国側JCC感想(2023/05/21追記)

02:戦闘空中哨戒。コスト3の持続系。対空対艦で縦横に活躍するのでほぼ必須。制空権大事。ただし対地攻撃はないので注意。
07:「利剣」GJ-11無人攻撃機。コスト2の使い捨て。3d20[12]と威力はそこそはそこそここだが、65%で迎撃を突破できるのでSEADの切り込み役に。
13:ソーシャルメディア活用。各40%で5か所を偵察。博打だがコスト1なのですべて許せる。場所の制約が無いのもポイント。
20:戦術航空システム。親部隊の7ヘクス以内を飛び回る偵察機。速度は遅いがコスト1でこれは助かる。敵に回すと、この撃墜に迎撃と弾薬を強要されるのも大変ウザい。
21:「翼竜」GJ-1D汎用ドローン。コスト2の持続系。持続航空系では最弱だが、存在することに意義がある。
23:EMSジャミング。コスト2の使い捨て。相手のAP-2はハマれば強力。切り札になり得る。
34:戦術サイバー攻撃。コスト2の使い捨て。70%で敵スタックを1ターン行動不能にするのは強力。SEADとのコンボに。逆にこのキャンセル系は1枚キープしておきたい。
40:クワッドコプター・ドローン。コスト1の配属系。着弾観測で長距離攻撃+20%は美味しい。CPが余ったら。
51:無人戦闘車両。コスト1の配属系。HP+2/CV+6はどちらも強烈。買い。
63:HALO潜入。戦闘機に迎撃されるが、隙を突けば盤上どこにでも特殊部隊を送り込める。コスト3の使い捨てなのが難だが、要塞島を作られた時には役に立つ。
79:J-15D電子攻撃機。コスト3の持続系。攻撃能力は皆無だか、タイプを問わず味方カードに対する攻撃を妨害する面白能力が特徴。JCCとのコンボ前提なので組み合わせに注意。
93:「轟」ステルス爆撃機。コスト5の使い捨てととんでもなく高価だが、70%で迎撃を突破して6d20を叩き込む打撃力が魅力。DEADの切り札に。

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