We Are Coming, Nineveh! : GGG 2023/10/08
午前の「コルベット・コマンド」に続き、午後も新作人柱会を開催。
We Are Coming, Nineveh! - NUTS! Publishing (→)
2017年2月、イラクのモスルを占拠するダーイッシュ(ISIS)に対する、イラク治安部隊(軍および内務省)の半年にわたる奪回作戦をテーマとしたウォーゲーム。元々はMcGill Universityの「紛争シミュレーション設計」のクラスの学生が制作したもので、これを指導していたRex Brynenと、盟友のBrian Trainがディペロップ。最終的にNUST!に持ち込まれたというユニークな経緯をたどった作品です。デザイナーにクレジットされているJuliette Le MenahezeとHarrison Brewerがこの学生で、このあたりの来歴はこちらから。(→)
肝心のシステムですが、シークエンスは両陣営の移動・戦闘を交互に実施するオーソドックスなもの。ユニットも回転ステップロス式のブロックを立て、正体を隠匿する伝統の積み木システム。戦闘も基本的には1d6で攻撃ユニットの戦闘力以上が出れば1ヒットというシンプルなもの。この最小限のシステムに、両陣営ともゲーム開始前に自陣営のデッキから、追加の部隊やアセットを選択購入する要素を追加。本作戦におけるさまざまな戦略を試すことができる……という格好になります。
このあたりの「プレイの容易な最小限の基本システムに多彩なオプションを追加する」というデザインは、前後して出版された「Littoral Commander」とも共通したもの。ゲーマー向けではなく、専門家のウォーゲーミングに求められるものは何なのか?という視点の違いが窺えるのが面白いところです。
またゲームの勝敗は、掃討作戦の成功自体は自明のものとして、ダーイッシュの拠点となっている「旧市街」が制圧された時点でゲームは終了。鎮圧までのターン数である「時間」、鎮圧側のISFが被った「損害」、掃討作戦中の「付帯的損害」をISF側の失点として判定されます。このうち「付帯的損害」は、プレイヤーがコントロールすることはできず、戦闘や砲爆撃にともなう一定確率で発生します。「旧市街」「市街地」「開豁地」の順番で被害が発生しやすくなっていますので、掃討作戦の焦点が旧市街に向かうにつれて、加速度的に増加してゆくことになります。砲爆撃アセットは目標エリアを一方的に攻撃できる強力なアセットですが、付帯的損害も高確率に設定されています。ならばと歩兵を前に出せば、ダーイッシュの戦闘部隊やIEDによる損害が……というわけです。もちろん慎重に戦線を押し上げれば、時間を犠牲にすることになります。
今回はNT氏(ISF)とN村(ダーイッシュ)での解読人柱会。結果は前のめりの初期配置で、戦線の縦深を取りすぎたダーイッシュの戦略ミス。敗走気味の退却で戦力がすり減らされ、肝心の旧市街防衛戦の段階での戦力が不足。作戦期間、付帯的被害、自軍損害のすべてで史実以上のパフォーマンスをあげたイラク側の完勝となりました。ぐぬぬ。プレイ時間は3時間ほど。
2017年2月イラク南部の都市モスル。同地を支配するダーイシュ(イスラム国)勢力に対して、イラク国軍の掃討作戦が開始された。 pic.twitter.com/XssaTFEIbr
— N村 (@enumura) October 8, 2023
◆今回のメモ
(3.3/4.1) シークエンスは「ISFプレイヤーターン(ISF支援フェイズ>ISF移動フェイズ>ISF戦闘フェイズ)→ダーイッシュ・プレイヤーターン(同様)→ターン終了フェイズ」が正しい。ターン終了フェイズは両軍共通で、両軍とも積み木を立てるのはこのタイミングなのに注意。(4.14)は(4.2)に、(4.2)を(4.3)にするべきだと思うの。
リーダーのリロール能力は戦闘ダイスのみ(7.21)。アセットほかには使用不可。
(6.1) 攻撃側が第2ラウンドを選択した場合、攻撃側の第2ラウンド選択能力を持たない全ユニットは先に強制退却する。(→)
Capability系アセットの「Old City禁止」のアイコンは「OCを目標にできない」の意。また問題のCoalition Artilleryには、このアイコンが欠落している(「OC目標禁止」が正しい)。(→)
AD9のヒット無効能力はIED系のヒットにも効く。(→)
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