海保のお仕事！ : RBX

今回のプレイ中に、プレイでも救難に活躍したMA722「みずなぎ」の事故のニュースが飛び込んできました。関係者のご冥福をお祈りいたします。

「海保のお仕事」Work of the JCG - ジブセイルゲームズ (→)

2020年代前半の日本の領海全域を舞台に、巡視船の運用を中心とした海上保安庁の業務運用をテーマとした、ソリティア・ウォーゲームの体裁の「図上演習キット」。スケールは推定100kmヘクス、巡視船1隻または航空機1-2機、1ターン1か月の強いて言えば作戦級。また1ターン中に16枚の「事案」カードが処理されますので、タイムスケールは見かけ以上に細かめ。1年間の運用を体験するメインシナリオのほか、カード1枚、カード1山（4枚1週間）、カード4山（1か月）のショートシナリオ、仮想・将来設定のシナリオ3本が収録されています。

ゲームシステムは、まずその月の「派遣事案」のカードを引き、月次イベントを解決。次に各地の母港、空港に指定配備された巡視艇、航空機から、管区毎にその月の哨戒ユニットを配置。以後はひたすら事件イベントである「発生事案」カードを引いて、その解決を繰り返すというシンプルなもの。月次の「発生事案」16件を解決したら、哨戒中や疲労したユニットをリセットしてターン終了。翌月の処理を開始します。

「事案発生」カードは「海難救助」「自然災害」「洋上救急」「違法操業」といったお馴染みの任務から、「海洋汚染」「不審船」「テロ警戒」といった物騒なものまで様々。まずはカードに記載された表に従い、事案の発生海域と解決難易度である「事案レベル」を決定します。

場所と難易度が決まったら、適切な「制圧値」または「救難値」を持つ巡視船や航空機を派遣。その際、巡視船の速度と距離により到達判定を実施し、実際に到達できた巡視船を決定します。通常、7ヘクス以下（横浜から小笠原諸島の手前までに相当）の近海であれば到達判定は不要ですが、現場が外洋の場合や、老朽船や別管区の巡視船に応援を頼んだ場合は注意が必要です。また航空機には航続距離の制限がありますが、ヘリコプター運用能力を持つ巡視艇は、回転翼機の展開の起点としても機能します。ちなみにヘリコプターは、並の巡視船2-3隻分の制圧・救難値を持つ、事案解決の切り札ともいえるユニットです。

こうして初動部隊が現地に到達したら、ふたたび「事案発生」カードを確認して「現場状況」による「事案レベル」の修正を適用。簡単な事件と思いきや……という展開となります。こうして最終的な「事案レベル」が決定された後に、必要であれば増援部隊を投入。ただし増援部隊の到達判定は、初動部隊より若干不利なロールが必要となります。「現場状況」の修正表は最初からカードに記載されていますので、大きなヤマになりそうな事案であれば、ある程度の余裕をもって部隊を派遣することになるでしょう。

最終的に現地に到達した各部隊について、必要な事案解決能力の修正ロールを実施。この合計値である「成果値」が「事案レベル」以上であれば事件解決となります。そしてこの差である「業務達成値」によりVPを獲得。次の「事案発生」カードへと進みます。また基本的に出動した部隊は、月末処理でリセットされるまで再出動することはできません。過剰投入で後の事案の対処部隊が枯渇しないよう留意する必要があります。

そして最終的な評価は「業務達成値」によるVPの累積で判定されるのですが、この獲得表が曲者。業務達成値が高いほど高得点となるのではなく、事案レベルギリギリの達成値が最も高得点(2VP)。達成値5以上の大成功では、事件は解決するものの得点は0VPとなります。失敗すれば-10VP（一発更迭レベル）ですので、事件自体は真面目に解決する必要があるのですが、プレイヤーはそれぞれの事案を「適切なコスト（規模）の部隊で」解決することが求められるわけです。とはいえ安全マージンを見込むと、部隊は過剰投入になりがち。関係部署からは「なにもあんなに部隊を動員しなくても」と小言を囁かれる、という世知辛い展開となります。

というわけで本作、いわゆる場を盛り上げるための「ゲームのためのルール」は皆無で、実際のプレイでは淡々と事案解決を繰り返すことになります。ゲームとしての面白さを求めると面食らうと思いますが、海上保安庁の抱える多彩な業務とリソースの苦労を手軽に体験できる「図上演習キット」としては、過不足のない内容です。

今回の1か月分の事案レポートはこちらから。ちなみに月を跨ぐ要素はほとんどないため、プレイ時間的にも「シナリオ4：図上演習1カ月」（約2時間）を目安にプレイすることをお勧めします。

海上保安庁運用TTX「海保のお仕事!」RBX https://t.co/QvpUYWJbEx まとめました。

— Ｎ村 (@enumura) January 2, 2024