« Counter-Air : GGG 2024/04/14 | トップページ | 「1868戊辰戦争」タイムライン »

「1868戊辰戦争」ゲームレビュー(付:最新エラータ)

一年以上前からテストプレイに参加しておりました戊辰戦争ウォーゲームが、今春のゲームマーケット合わせでようやく形となりました。Twitter(X)ではレポートを垂れ流していましたので、すでにご存じの方も多いと思いますが、改めてご紹介させていただきます。

「1868戊辰戦争」司史生 ()

1868年4月の江戸開城から、同年9月の会津藩降伏まで。戊辰戦争東日本戦役全体を再現するウォーゲーム。原案は司史生氏が2006年にコミックマーケットで頒布した伝習歩兵隊の下野戦役「野州炎上ー慶応四年夏幕府歩兵隊」で、これを東日本全体に拡大してリメイクした、という格好です。ウォーゲームとしての概要は「新政府軍」と便宜上「同盟軍」としてまとめられた旧幕府系抵抗勢力の2人対戦。半月ターン、主要宿駅単位のPtPマップ、大隊/1隻ユニットの作戦・戦役級といったところです。戦術レベルの指揮官の能力については各ユニットに織り込み済みのため、指揮官カウンターなし。作戦レベルでのエピソードはイベントカードで再現する、という格好です(例:「板垣退助」のダブルムーブ。「大鳥圭介」の長距離行軍、等)。

1868-2024041306a

ゲーム全体の構造としては、新政府軍は江戸を橋頭保に甲信越から南関東に先遣隊が薄く広く展開。対する同盟軍は、会津藩、庄内藩、散在する旧幕府系部隊(伝習隊、彰義隊、撒兵隊、柏崎桑名藩ほか)のみの状態からゲームがスタート。ゲームの進行に伴うイベントカードのプレイにより、同盟軍に仙台藩、米沢藩、盛岡藩が、新政府軍に久保田(秋田)藩が参戦してくる中盤を経て、9月後半のゲーム終了までに会津藩が降伏するかで勝敗が争われます(キャンペーンシナリオ)。また6月前半、8月後半で終了するショートシナリオでは、戦略的要地(横浜、上野、新潟、白河)の確保状況で勝敗が判定されます。プレイ時間は全14ターンで丸一日、ショートシナリオで半日程度を想定しています。

ゲームエンジンは交互に自陣営の活性化チットのプールから作戦チットを引く、いわゆる「チット引き」による活性化システム。引かれたチットで指定された「拠点」から、指定スペース数以内の連絡線(補給線)を設定できるひとつのスタックを指定し、移動、戦闘するというシンプルなもの。1ターン中にチットを引ける回数は上記要地の確保数に依存しており、江戸の治安回復(上野)、外国からの兵器・弾薬の輸入(横浜・新潟)、東北諸藩に対する政治的影響(白河)が、作戦、戦略レベルの行動力に反映しているという格好です。

チットの内訳は、同盟軍は「会津藩」「米沢藩」「旧幕軍」など勢力単位で、活性化には該当部隊が所属しているスタックを指定する必要があります。対する新政府軍は「東海道軍」「東山道軍」「東征大総督府」など、連絡線の起点の縛りはありますが、活性化させる部隊の制限はなく、比較的柔軟な運用が可能です。

1868-2024041436a

戦闘は敵の存在するスペースに侵入、停止したところで、両軍のユニットを並べて射撃しあうという簡易戦術戦闘システムです。ここで重要なのが、戦力(兵数:攻撃力)と練度(防御・再編能力)とは別に設定された、装備と散兵戦術の熟練度を反映した「火力」の能力です。ざっくり「1:ゲーベル銃&散兵以前(東北諸藩)」「2:エンフィールド銃&散兵導入段階(新政府諸藩)」「3:スナイドル銃&熟練散兵(薩長、長岡藩、伝習隊)」「A:砲兵」というレーティングで、戦闘時は砲兵を皮切りにこの優秀な順番に射撃を実施してゆきます。また同値の場合は防御側が先攻です。このため同格の攻撃側や、格下の部隊は一方的に攻撃され、敗走してゆく展開となります。こうなると敗走分を見込んで数を頼みに突撃するか、地形効果(防御側火力+1)のある「山地」で守るしかありません。

こうした戦術戦闘システムと、方面ごとに活性化できるスタック数の縛りから、基本的に各方面で双方の主力スタック同士がにらみ合うマンツーマンディフェンス状態で戦線は膠着。これを増援や補充に勝る新政府軍が、正面攻撃による消耗戦や、有力な別動隊の投入による迂回と戦線の拡大で突破してゆく、という流れとなります。特に迂回については、船舶ユニットを使用した海上移動や、連絡線の設定が極めて重要です。制海権を失った側は、後方の無防備な港湾への奇襲上陸を常に警戒する必要があります。

1868-2024041453a

というわけでA3マップ3枚に収められた東日本全体で、関東、越後から、そして秋田から会津盆地へ収束してゆくパノラマが展開されます。各戦線がどのようにリンクしていたのか?特にこれまでのウォーゲームではほとんど取り上げられることのなかった、東北諸藩の動向が俯瞰できるのが本作の見所です。おそらくほとんどの方は仙台藩兵と「奥羽鎮撫」ユニットの初期配置に驚かれるのではないかと思います。ちなみに冷静ルールを読み解くと、きちんと秋田に逃げられますのでご安心を。

そしてもうひとつの見所が、個別にレーティングされた諸藩諸隊のカウンターシート。ユニークユニットとして館林藩兵が登場するウォーゲームは当面現れないのではないでしょうか?宿駅名で描かれたPtPマップと相まって、正直なところ初期配置が大変面倒くさい(「The Gamers」系列の面倒くささといい勝負です)。しかし勝手知ったる郷土マップ効果と合わせて、毎回勝手なドラマが生まれる物語創作エンジンとなっています。

ちなみに先日のプレイでは、国府台から大鳥軍の後衛として国府台からの脱出戦当初に壊滅した新撰組が、残党狩りを潜り抜けて会津に到着(歩兵部隊としては微妙なため置いて行かれ、壊滅部隊の再建で拠点に登場。大鳥本隊は北上脱出に失敗し、船橋から江戸を牽制)。しばらく鶴ヶ城にとどめ置かれていた同隊でしたが、新政府軍新潟上陸の急報を受け、同じく予備として会津若松に駐留していた玄武隊、白虎隊とともに新潟に駆け付け、艦砲射撃をものとせず先遣隊を撃退して新潟を奪回。最終的に新政府軍本隊の再上陸で新潟を失ったものの、玄武隊の犠牲で白虎隊とともに無事脱出するという予想外の大活躍となったのでした。

実際のプレイ風景はこちら。ゲームマーケットの頒布先情報もリンクがあります。

 

ゲーム自体に関するディペロップと背景解説はこちら。

おまけの戊辰戦争東日本戦役に関する自由研究小ネタ集はこちら。

 

◆エラータ、明確化、ルール追加情報(デザイナー確認済)(2024/05/27)

・ユニット誤記

奥羽諸藩「福島」ユニット記載のID:誤(A53)※坂谷峠→正(A57)※福島。ゲーム添付正誤表の「初期配置表」誤記に加えて、ユニット記載のIDも誤記。福島が正しい。

・明確化

「一揆」マーカーの配置された地点には退却できない。※退却先条件(11.2)の記載漏れ。

・追加ルール

新政府軍が第1ターンの最初の作戦チットで「戦略移動」を引いた場合、まとまった戦力が尾瀬経由で会津盆地に初手で進出できるという問題が存在する。これを防止したい場合、および戦略移動の自由度が高すぎると思われる場合、以下の選択ルールを使用できる。

1. 以下の地点へは戦略移動は進入できない:▲八甲田山(A06)、▲鳥海山(B23)、▲尾瀬(A86)、▲三国峠(D16)。

背景解説:戦略移動の前提である宿場の継立を利用した移動が困難な経路であるため。

2. ▲尾瀬(A86)を進入不可とし使用しない。※テストプレイ会推奨

背景解説:史実においてこの経路からの進入は試みられたものの、実質的に中止されているため。※会津藩兵が沼田側の戸倉関所を越境襲撃する「戸倉戦争」(5/21)が発生したが、以後は尾瀬に同盟軍の守備隊が置かれたのみで動きはなかった。

|

« Counter-Air : GGG 2024/04/14 | トップページ | 「1868戊辰戦争」タイムライン »

1868」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« Counter-Air : GGG 2024/04/14 | トップページ | 「1868戊辰戦争」タイムライン »