Inside the Armor : GCS 08/28
昨年末に twitter にて存在を教えていただき一目惚れ。年末からの注目作連発で長らく放置していた本作ですが、このたびようやくルール和訳とコンポーネント工作が終了。syphalias氏を人柱にプレイにこぎ着けることができました。毎度お付き合いありがとうございます。
Inside the Armor - Jonathan Miller(*)
第2次大戦の水上戦闘艦における、ダメージコントロールを再現したゲーム。よくある「敵部隊と戦いながらミッションを達成する」系統の作品ではなく、本作の舞台となるのはタイトル通り甲板下の船殻内のみ。一方のプレイヤーが艦の応急担当指揮官を、もう一方のプレイヤーは名目上の敵軍として、艦に降りかかるすべての不幸を担当します。
現在 Playtest Kit 3 として、台南沖航空戦での被雷後に囮として放置されたクリーブランド級軽巡洋艦ヒューストンの戦い(*)が公開されており、今回作成したのもこのキットです。ちなみに Playtest Kit 4 として、レイテで神風攻撃を受けた同じくクリーブランド級コロンビアの戦いが開発中とのこと。システムも少々変更される模様です。
ゲームシステムは Twilight Struggle に類似したカードドリブン。OP値を消費して艦内各区画の乗組員のコンディションを上下させ、これをダイス修正として艦内設備(ボイラーや砲塔など)に対する破壊や修復の試みを実施するというのが、ゲームの基本的な流れです。
また特殊なカードとして「火災と浸水」がプレイされると、浸水口・火災の大きさとポンプ・消火器の能力をそれぞれ比較し、浸水・火災・煙害の各災害レベルの増減処理が実施されます。
さらに「スコア」カードをプレイした場合は、事前に指定されたている条件(稼働中のボイラー数、レベル4浸水の数、等)により VP 集計が実施されます。この得点の対象が事前に公開されているのがプレイ上のポイントで、「敵機の来襲前に CIC と対空砲を再稼働させろ!」といった時々の争点を巡る攻防が発生するようになっています。
こうしてプレイ中に「浸水増大による浮力喪失」「片舷浸水による転覆」「弾薬庫延焼による爆沈」が発生した場合は艦船側の敗北、それ以外の場合はサドンデス VP または、指定回数の「スコア」カードがプレイされた時点の VP 判定により、勝敗が決定されます。
写真はセットアップ。スペースの関係で船体が分断されているのはご愛嬌。すでにヒューストンは右舷中央に被雷しており、艦首尾の両缶室を中心に浸水が始まっています。赤いマーカーが載せられているのは、損害を受けて停止中の艦内設備。緑のマーカーは蒸気圧や電力など、艦内の動力の配分を管理するマーカーです。
今回は米軍側を syphalias氏が担当。対する(名目上の)日本軍をN村が担当。シナリオ指定の最初のスコア条件は、雷撃機の来襲を反映して米軍が「稼働中の5in砲/40mm砲の数(CICが停止していると得点不可)」と日本軍が「停止中の機関の数」です。
序盤は双方ともゲームシステムに不慣れなため、勝手がわからず右往左往。ひとまず CIC への浸水にすばやく対処し、全対空砲の稼働状態を保った米軍が大きく得点を伸ばします。船体の方は、被雷した右舷タンクにバラストを入れ忘れたため、いきなり40度の傾斜が発生。米軍プレイヤーを焦らせます。
このあたりで両軍とも、影響度(乗組員コンディション)を配置し、クーデター(システムの破壊・修復)を起こす、というゲームシステムを把握。次の得点対象が米軍「稼働中のボイラー」と日本軍「レベル4浸水の数」となったため、既に浸水が進行中の缶室が新たな争点となります。日本側は「パニック」イベントで乗組員のコンディションを低下させ、4基のボイラーを次々と損傷させることに成功。このボイラーが生み出す蒸気は、艦の動力ツリーの起点ともなっているため、連鎖的に艦内の全システムが停止するという危機に陥ります。そしてここでプレイされた2回目の得点集計により、VP は米軍若干有利というところまで揺り戻し。傾斜は適切なバラスト注入により回復中(35度)。浸水は順次増大中(累計2,000トン)といったところです。
続く最後の得点対象は、米軍「稼働中のディーゼルポンプ数」と日本軍「浸水ゲージ500トン毎」。日本軍は引き続きボイラーの完全破壊を目指しながら、浸水増大を狙います。対する米軍は「スコア」カードを握り込んでおり、日本軍の隙をついて艦尾ボイラーを修復。復活した動力を次々と接続し、ディーゼルポンプの再起動に成功します。ここですかさず「スコア」を切った米軍は、1VP のリードで時間切れに持ち込みます。
最終的に4基中2基のボイラーが破壊され、傾斜30度に浸水2,500トンの被害を被った満身創痍のヒューストンでしたが、迎えの艦隊と合流するまで耐え抜くことに成功。ヨロヨロとウルシーへの帰路についたのでした。プレイタイムは1時間ほど。
見慣れない艦内動力のツリーとフラグ管理に少々面食らいますが、連鎖的に次々とシステムが停止してゆく様は、パニック映画を彷彿とさせて大いに盛り上がりました。わずか5ページのルールながら「艦艇のダメージコントロール」というテーマをエキサイティングに再現した好ゲームという感触です。プレイ時間も意外に短く、終盤の1点を争う攻防は熱いです。デッキプランを模した変則マップを除けば、カードドリブンとしては手軽なコンポーネントですので、是非ともどこかのメーカーの目にとまることを祈ります。
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