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BattleFleet Mars : YSGA 2012/07/21

所用のため今週の YSGA は午後から参加。
今回は syphalias, FORGER 両氏をお誘いし、長年の懸案となっていた BattleFleet Mars の勉強会を開催してきました。

BattleFleet Mars - SPI()

[1.0] はじめに
BattleFleet Mars は、21世紀後半における太陽系内の惑星間紛争をシミュレートするものである。本作における地球の経済は地球外の資源に依存しており、そしてその資源の採掘と管理は超国家的な複合企業体 Ares Corporation によりコントロールされている。本作はこのアレス社の永続的な支配に幻滅し、政治的・経済的な自由を獲得するため宇宙と火星で、生産手段を押収するべく蜂起した現地従業員たちの反乱の顛末を扱っている。

……というわけで Battlefleet Mars です。「B級SFゲーム分科会」をはじめ、初期のSFウォーゲームの傑作として名前の挙がる本作。N村自身も今世紀に入って何とか入手したのですが、3段組約20ページの特異なシステムに尻込み。長らく積みゲーの山に埋もれていました。しかし今年に入って以前から囁かれていた Miranda による本作のリメイク、Free Mars の発売スケジュールが具体化。これはリメイク発売前に、オリジナルをプレイしておかねばと一念発起。なんとか戦略ゲーム分の和訳を完了。ようやくプレイにこぎつける事ができました。

本作の特徴については、前述の「B級SFゲーム分科会」様にまとめられていますので、詳しくはそちらへ。SPI のハードSFゲームとなれば、プレイアビリティを無視した精密で重厚なゲームを想像するのではないかと思います。本作に関しても半分は正解で、X-Y軸とX-Z軸の2枚のマップを使用する3次元ベクトル戦闘システムを要する戦術戦闘ゲームはやりすぎの感があります。しかし残る本体となる戦略ゲームの方は、特異なゲームシステムさえ把握してしまえば驚くほど単純で、非常にプレイアビリティの高いゲームだったのには驚かされました。

Bfm_2012072102a

そしてこの戦略ゲームの根幹となる惑星間移動システムについては、これまで取り上げられた情報がないため、この機会に紹介しておきます。写真は戦略ゲームの舞台となる太陽系ディスプレイ。ちなみに左は syphalias 氏所有のボックス版と、N村所有のフラットトレイ版です。

マップ上には同心円に水星から木星までの公転軌道が描かれており、ターン進行に伴って惑星・小惑星がそれぞれ公転軌道上を移動します。木星と小惑星軌道の間に設けられた帯状の囲いは、各惑星に対応した「航行中トラック」Ship Transit Track です。また右上に置かれている長方形が、移動システムのキモとなる「定規」こと「時間・距離メジャー」Time/ Distance Measures です。

本作は「敵味方の宇宙船同士が、深宇宙で邂逅・交戦することはない」というスタンスでデザインされているため、宇宙船はマップ上に留まることなく、惑星から惑星へと直接移動します。例えば地球から木星へと移動する場合の手順は、

1) 地球と木星の未来位置の距離を「定規」で測定
2) 定規の目盛り(航行所要ターン)に対応した番号の木星の「航行中トラック」内ボックスにユニットを配置。
3) 以後毎ターン、木星「航行中トラック」を1ボックスずつ進行。
4) ボックス[1]から次に進んだ時点で、木星の衛星軌道に到着。

……という流れとなります。単純に定規で惑星間を測り、所用ターン数に対応するボックスに配置するだけで終了。プレイヤーは一切計算の必要がありません。どこから出発しても、目的地の「航行中トラック」の残りターン数で管理されます。宇宙船の性能は独占企業の業務用ということで規格化されているため、使用する定規も一種類のみです。

またマップの縮尺も練られおり、最外縁の木星軌道直径がちょうど3ターン分の到達距離に相当しています。このため定規の目盛りは、「ここまで1ターン|同2ターン|この先3ターン」と極めてシンプルです。テーマは全く異なりますが、High Frontier と比べても格段に簡単です。

本作の紹介時によく引き合いに出される航空宇宙軍のファンとしては、「小惑星帯で待ち伏せ攻撃はできないの?」「宇宙船の性能同じなの?」などの異論はあるかと思いますが、このシンプルさは天才的。クレジットにはゲームデザインに加えて「物理システムとグラフィック」 にも Simonsen の名前があるので、このあたりの調整は彼の功績のようです。

というわけでようやく漕ぎ着けた戦略ゲームの勉強会。担当はアレス社側をN村が、火星の叛乱側を syphalias, FORGER 両氏ですが、実質上の輪講プレイです。

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1戦目は火星・木星に加えて、ゲーム開始時に帰趨が判定される4大小惑星のうち、Ceres, Pallas, Juno が叛乱側に同調。会社側に残されたのは、地球と Vesta のみとなります。蜂起の混乱を収拾したアレス社取締役会は、広報部こと地球在住のエージェントに地球社会への政治工作を命じ、WORD の支援を取り付けると即座に反撃を指示。かき集めた輸送船(実態は治安維持用の警備艇)艦隊を Pallas へと向かわせ、同時に 木星と Ceres へと各1隻ずつのダミー艦隊を向かわせます。

対する叛乱側は、重水素の採取工場を擁する木星への侵攻が本命と判断し、防衛艦隊を派遣。これで手薄となった Pallas にアレス社警備艦隊が到着。僅差で守備部隊を制し、Pallas を陥落させます。これにより火星側のモラルは大幅に低下。また火星在住の叛乱側幹部(エージェント)に対し、地球側の刺客が接近。この対処のためエージェントを使い果たした火星側は、火星本土でのモラルテックに失敗(確率1/6)。半ば事故により、わずか4ターンでアレス社側の勝利となりました。プレイタイムは2時間ほど。

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これは納得がいかんと、一同続けて2戦目へと突入。両陣営は1戦目の戦訓を生かして、蜂起判定から小技を投入。蜂起判定の結果は、軌道前方の Ceres, Pallas が叛乱に同調し、後方の Vesta, Juno がアレス社側に留まります。また蜂起側の策謀により、会社側に残された小惑星では資源採掘船のセットを叛乱側に押さえられ、序盤のアレス社は資源不足で圧倒的な生産力を生かせない危機に陥ります。

そして終結を終えた両軍は、それぞれ主力艦隊をクロスカウンターのごとく相手の拠点へと指向。互いにスイングバイで航路を欺瞞し、タイミングを合わせて目標惑星に分進合撃を仕掛けるにいたります。叛乱側の目標は、小惑星帯の最後方を進む Juno。隻数的には叛乱側が優位でしたが、アレス社側は既に艦載ミサイルの配備を済ませていたため、戦力的には互角の状況。この戦力ブーストが決め手となり、Juno 防衛戦は僅差でアレス社側の勝利に終わります。

対するアレス社側の目標は、叛乱軍の生命線を握る木星。ここに武装したカタパルト船団を集中投入したアレス社側は、優勢な火力で木星を蹂躙。同基地の攻略に成功します。ここでエネルギー源を絶たれた叛乱側は、生産や損傷艦艇の修理が不可能となることが判明。Juno 攻防戦で多数の損傷艦を抱えた叛乱側は、ここで投了を宣言。第2戦も5ターン2時間ほどでアレス社側の勝利に終わりました。

未だ叛乱側の防衛戦略が模索中のため、今回はいずれのゲームも早期に決着してしまいました。しかし両陣営のモラル変動を鑑みるに、仮に長期戦となっても1日で十分プレイ可能な長さに収まりそうな感触です。前述のように、根幹となるシステムは極めてシンプルで、ダミー艦隊と航路欺瞞による戦略目標の読み合いに集中できる点は一同高評価でした。残念な点としては、基本的に味方惑星でしか政治工作が実施できず、両陣営のエージェント同士の丁々発止の戦いが見られないのが惜しいところ。敵惑星にも潜入工作が実施できるようであれば面白かったのですが。

2012/07/25 追記訂正:エージェントは暗殺(11.46)と乗艦撃沈(11.24)でのみ死亡するため、初期配置惑星が相手支配になった場合は移動できなくなるだけで、そのまま現地に潜伏できる模様。これでAres 広報部に対抗できるようになる?

などと不満も残りましたが、戦略ゲーム自体は評判どおりの面白さであることは一同確認。引き続き火星・木星の防衛戦略を試行しつつ、もうしばらく俎上に置いておこうと考えています。syphalias, FORGER 両氏とも勉強会にお付き合いいただきありがとうございました。

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