Bios Genesis : 秋葉原会 2016/11/06
本ゲームにおける進化経路は、「原始スープの具材」(レフュジアとバイオント)として始まり、複製能力を持たない自己触媒サイクル、RNAワールドのバクテリア状の細胞(複製エラーの危険を持つダーウィン的微生物)、DNA-タンパク質有核細胞(隷属する原核生物細胞を細胞小器官として利用し、高精度で複製をおこなう真核生物)へと至る。Bios:Genesis - 脚注より
Bios:Genesis, A cardgame of the origins of life - Sierra Madre Games(→)
Sierra Madre Games, 2016年の新作その1。地球史最初の40億年を舞台に、生命以前の有機分子から多細胞生物として陸上に上陸するまでの進化をシミュレートする、マルチプレイ・カードゲーム。
Sierra Madre Gamesとしても新系統のシステムで、強いて言えばBios Megafaunaのカードを組み合わせた進化システムを、Greenlandのダイスハントでドライブするようなシステムです。ここでヤバい香りを感じた方、速やかに離れましょう。身を乗り出した貴方、今年もようこそいらっしゃいました。
ゲーム開始時のプレイヤーの立場は、生命以前の自己触媒作用で増殖する分子。鉱物結晶のようなものです。各プレイヤーはこれを表す「バイオント」というトークンを所有してゲームを開始します。まずはこれを生命の4要素(代謝、特殊化、抗エントロピー、遺伝)を備えた原核生物のステージに引き上げることが目標です。
原始地球の海洋・沿岸・大陸、および火星を含む宇宙には、イベントにより生命誕生に必要な物質が濃縮された有機スープが生命活動によらず供給される「レフュジア」と呼ばれる生命の孵化場が出現します。各プレイヤーは手持ちのバイオントをこれらレフュジアに送り込み、素材となる「マナ」を集めながら、生命誕生のための自己触媒ロールを試みます。これに成功したバイオントは、レフュジアのカードを微生物面に裏返して獲得。晴れて原核生物が誕生します。
原核生物の次なるステップは、ダーウイン進化ロールにより触媒(ゲーム内通貨)を生産。これを支払って各種のRNAを始めとする生命機能を表した変異カードを獲得し、細胞の機能(4種の染色体に対応した染色体キューブ)を増やすこと。この過程で変異カードを裏面に進化させると、核とDNAを備えた真核生物へと至ります。
また各プレイヤーはウィルスやシアノバクテリアをはじめとする各種のパラサイトを1枚所有しており、これを他のプレイヤーの生物へと寄生せることができます。寄生したパラサイトは、宿主の触媒を勝手に支払って自分用の変異カードを購入、進化してゆく文字通りの寄生虫です。この宿主とパラサイトは「赤の女王」アクションを通じて、細胞の染色体キューブを奪い合う綱引きを繰り広げます。この勝負は概ね寄生側に有利ですが、パラサイトが勝ち続ければリソースを奪われた宿主は環境変化に対応できず、パラサイトもろとも絶滅してしまうかもしれません。また宿主がパラサイトに止めを刺した場合、パラサイトの核となるバイオント・トークンは宿主に奪われ、葉緑体やミトコンドリアのような細胞内小器官として使役されることになります。
こうして一定値の染色体を蓄えた生物は、海藻や扁形動物、三葉虫、ディッキンソニアといった多細胞真核生物である海棲の「肉眼的生物」カードの購入が可能となります。こうして多細胞生物に進化した後は、生物に対応する腎臓や顎、脳、チキン質といった器官キューブを購入。すべての器官キューブスロットを埋めた海棲肉眼的生物は、裏面の陸棲肉眼的生物に進化。40億年の進化の頂点に到達します。
最終的な勝敗は、生物の能力値である染色体キューブの合計値で争われ、高度な機能を持つ生物をできるだけ多く作ることが目標となります。また海棲・陸棲の肉眼的生物は、それぞれ陸海の食物連鎖に組み込まれ、各生態系の頂点に立った生物はボーナスVPを獲得します。
というわけで、地球創世記の冥王代から原生代まで、生命の誕生からカンブリア爆発までの進化を1ターン2億年で駆け抜けるという、一部のマニアにはたまらない進化ゲームが本作Bios Genesisのテーマです。
このように、再現しようとするテーマをストレートにゲームシステムに組み込んで、曲がりなりにも動くゲームに仕上げてしまう手腕はPhil Eklundの真骨頂。特に前述のパラサイトとホストの綱引きによる共進化の見せ方など、生物進化の学習教材としては大変に優れたシステムです。半面、例によって環境シミュレータとしての比重が大きく、競技ゲームとしては揺らぎが大きく、非常に乱暴な作りです。
ユーロゲーム然とした見かけによらず、こうしたまず再現したい背景ありきのデザインは、極めてウォーゲーム寄り。毎度の事ながら「生物進化に興味のあるウォーゲーム/シミュレーションゲーマー」という、大変ニッチな層にだけ刺さるゲームとなっています。
今回は同日開催されたOCS勉強会の余興として、シエラ会メンバー3名での人柱プレイを実施。結果はインスト込み3時間ほどのプレイでフルターンを完遂。最速で肉眼的生物「酸漿貝」を登場させたものの、刺客として送り込まれたマラリアとプリオンXに散々に足を引っ張られたForeigner氏の進化が停滞。この隙に両生類で陸上進出を果たした、HA氏の逆転勝利となりました。
ちなみにN村陣営は散々で、Foreigner氏の原核生物に内部共生体として潜り込ませたバイオントは早々に叩き出され、その後は10億年以上にわたり地底高熱生物圏に逼塞。原生代にようやく古細菌として生物デビューを果たしたものの、その後は泣かず飛ばずで真核生物にも進化できず、生命史の闇に葬られたのでした。
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