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War in the MegaCity : SoGC 2019/02/11

今月のソフィアゲームクラブでの課題は、ハイブリッド紛争シリーズのほぼ5年ぶりとなる最新作。

War in the MegaCity - CounterFact Magazine #9()

One Small Stepの機関誌であるCounterFact Magazine付録。21世紀の架空の大都市における、政府軍と反政府勢力との都市ゲリラ戦をテーマとしたウォーゲーム。純軍事的な市街戦ではなく、いわゆる軍民を巻き込んだハイブリット戦争を扱っているのがポイントです。

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先日のArc of the Kaiser's Last Raider同様、本作のデザイナーはOSSの首魁であるJoseph Miranda。そして本作では、同氏がModern War誌初期に試みた「ネットウォー」システム(仮)を久しぶりに採用しています。

この「ネットウォー」の特徴は、戦闘結果の軍事的成果(敵ユニットの除去・ステップロス)と政治的影響(インフォウォー値=勝利得点)をそれぞれ個別のベクトルとして提供する3種のCRTにあります。

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こちらが問題のCRTですが、それぞれ赤枠が防御側の政治的な得点ゾーン、青枠が攻撃側の得点ゾーンとなります。一見してわかる通り、軍事的な成功が必ずしも政治的成果に結び付いていないことが見て取れます。

特に初めて本シリーズに触れたプレイヤーが面食らうのが「Disprupt CRT」で、こちらでは「低比率では攻撃側が消耗するが、得点するのも攻撃側」という一見不可解な内容となっています。これは反政府側であれば政治的効果を狙った自殺攻撃、政府側であれば政治的効果が高い反面、際限のないきめ細かな対応を要求される民軍協力活動を表しています。

対して高比率ほど攻撃側が得点・成長する「Confront CRT」は、部隊に比較的軍事寄りの治安任務で経験を積ませるミッションを表しています。また低比率から敵の半数を除去できる反面、高比率ではむしろオーバーキルによる防御側得点が無視できなくなる「Kinetic CRT」は、いわゆる通常の軍事的攻撃に相当します。

住民も少なくメディアの注目度も低い低価値エリアであれば、「Kinetic CRT」で敵を殲滅することが有効でしょう。しかしメディアの注目する高価値エリア……例えば市民の集まるショッピングモールで、少数のデモ隊が正規軍部隊に蹂躙された場合、政治な勝利を得るのはどちらの陣営でしょう?いま狙うべきは敵部隊の排除なのか、政治的効果の獲得なのか?単純に「大戦力を集めて敵に叩きつける」だけでは済まされない、軍民を巻き込んだハイブリッド紛争を、このCRTの使い分けにより再現しているのが「ネットウォー」シリーズの特徴です。

また本シリーズのもう一つの特徴が、地域インフラの支配と、特殊部隊をはじめとする不正規戦部隊のルールです。本作の各エリアには、交通の要衝をあらわすオープンボックスに加えて、それぞれ地域の社会基盤やコミュニティを表した複数のアンダーグラウンドボックスが設定されています。エリア支配により得点するためには、オープン/アンダーグラウンドを含むエリア全体から敵ユニットを排除する必要があります。

しかしこのアンダーグラウンドボックスに配置された敵部隊は、地域社会と一体化しているという想定から、いわゆる通常の軍事攻撃(Kinetic CRT)では攻撃できず、その他のCRTを用いて攻撃する必要があります。しかし防御側に消耗を強いる「Disrupt CRT」では、防御側が得点してしまうというジレンマがあります。

そしてここで重宝されるのが、特殊部隊に代表される不正規戦部隊です。これらの部隊はアンダーグラウンドボックスを「Kinetic CRT」で攻撃できるという特性があり、掃討作戦に特に威力を発揮します。また不正規戦部隊はレベル(ステップ)を持たず、レベル低下による損害を受けることがありません。従って不正規戦部隊を除去できるのは「Kinetic CRT」のみ。ということは、アンダーグラウンドボックスにこもった不正規戦部隊は、不正規戦部隊によてしか除去できないという事になります。こうしてオープンボックスにおける正規軍部隊の紛争と並行して、アンダーグラウンドでは特殊部隊同士の暗闘が繰り広げられる……というのが本作の構造です。

さらに多彩なイベントを引き起こす「ネットウォー」マーカー、問答無用で2:1または1:1の物理攻撃を叩き込む航空攻撃とトラック爆弾など、現代治安作戦を彩るさまざまな要素が加わります。こうした正規戦とはまったく異なる混沌とした様相こそ、本作が再現しようとしている21世紀の戦場なのです。

というわけで、実際のセッションの結果はこんな様相に。今回は政府軍を担当したForger氏がシリーズ旧作の経験を生かし、政治的失点を顧みない綱渡りで反乱軍の掃討作戦を展開。正面戦力で劣る反乱軍(N村)は、コマンド部隊の地下潜伏によるエリア支配妨害と、低コストのデモ隊の自殺攻撃による政治的攻勢で対抗。最終的に政治的には終始優位に立っていたものの、「残忍なCOIN」で物理的に部隊をすりつぶされた反乱側が、エリア支配(市民支持)を失って政治的にも劣勢に。全7ターン中4ターン目で反乱側の投了となりました。プレイ時間は4時間強。

シリーズ中で最も完成度の高かったDecision: Iraq(MW#6)をベースに、サンドボックス化された架空戦でもあることから、ゲームのメカニズム面では問題なし。ただし事前のソロプレイでも懸念されていたのですが、ゲームバランスの点で反政府側に難があり、初期設定の底上げか動員コストの見直しが必要なのでは?といったところでした。

またOne Small Step製品では毎度のことですが、ルールとコンポーネントにエラーが散在しているのには閉口しました。今月の「アートワークは良いのにね」案件その2です。


・2019/02/16追記

◆石動竜仁(dragoner) 「「人の心」を巡る現代戦争」()

対叛乱作戦とサージ戦略についての良いまとめ記事。ここで言われている「異文化コミュニケーション」の経験を積むためのミッションが「Confront CRT」、地域復興(PRT)チームの活動が「Disprupt CRT」に相当します。参考文献リストもネットウォー、COINシリーズのプレイヤー向けに大変にお勧め。私もこのテーマに足を踏み込んだ当初に端から読みました。

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