Bloody April (S3) : GGG 2020/08/09
8月のGGG例会では、某シリーズ唯一の積み残しにようやく着手。S木氏のインストにより、ようやくプレイにこぎつけることができました。
Bloody April, 1917: Air War Over Arras, France - GMT Games(→)
Downtownに始まるGMTの航空作戦シリーズ中、唯一のレシプロ時代をテーマとしたシリーズ3作。第二次世界大戦をスルーして、舞台は唐突に第一次世界大戦へ。1917年のアラス戦線の塹壕線の上空における、複葉機の戦いがテーマとなります。デザイナーは前作Elusive Victoryに続くTerry Simoです。
ジェット時代からレシプロ黎明期というギャップから、さすがにスケールは1海里/ヘクス、2分/ターン、30MPH(マイル/時)/1MAなどと変更されています。しかしなんらかの任務を帯びた侵攻側が計画航路に沿って目標へと侵入し、迎撃側がその阻止を目論むというゲームの基本的な構造は、シリーズ作品を踏襲。特にルールのドラフト版がElusive Victoryを上書きする形で作成されたこともあり、ほとんどのルールは経験者には見覚えがあるものとなっています。とはいえさすがに航空史70年の進歩は無視できず、他の作品と大きく異なる点がいくつか存在します。
◆風の影響
本作に登場する航空機の水平速度は、おおむね90MPH~120MPH程度(3-4MA)です。この程度の速度では、風の影響が無視できません。本作では天候状態により、無風から指定方向へ15MPH~30MPH(0.5-1.0MP)の風が発生します。風が発生している場合、毎ターンの天候フェイズに、各編隊は指定方向にドリフトしてゆくことになります。進行方向であればダイレクトに速度は増減しますし、横風であれば直進すらままなりません。30MPHはちょっと極端ですが、複葉機時代らしいシュールで面白いルールです。
◆上昇と降下
ジェットエンジンのパワーに任せて、わりあいアバウトな垂直機動が可能な他の作品に対し、黎明期のレシプロ機の垂直機動能力は貧弱です。特に上昇は困難で、ジェット時代の「1MAで1高度域を上昇」どころではなく、機体性能により「Xターンをかけて1高度域を上昇」という手順を踏みます。例えば下写真のFE8の場合、「高度Low(4,000f)」から「Medium(10,000f)」に上昇するためには、7ターン分の上昇が必要となります(TtC:7L)。この途中状態は高度マーカにより「Low(+3)」のように記録され、このFE8の場合は上昇7ターン目に「Low(+7)」となったところで「Med(+0)」に置き換えられます。
これだけなら高度マーカーの差し替えが面倒なだけで、さほど問題がありません。しかし本作ではエンジンパワーの貧弱さを反映し、自身より高度の高い敵編隊に対する攻撃ができない、という制限があります。そしてこの高度比較には、「Low(+3)」のような中間高度も考慮されるのです!
この上昇性能は機体によって異なりますので、(+3)のような値を単純に比較することはできません。例えばHalberstadt D.IIのLow高度における上昇性能は「6L」です。従ってFE8「Low(+2)」とD.II「Low(+2)」では、実際はFE8の高度は「Low(+2/7)=5,700f」、D.IIは「Low(+2/6)=6,000f」となり、D.IIの方が若干上空を飛行していることになります。従ってFE8からD.IIを攻撃することはできないわけです。
ちなみに分数計算が面倒くさい人向けには、上昇力による高度早見表がルールブック巻末に記載されています。ここは確かにその通りですが、そこまでやるかぁと苦笑いしたルールでした。
また降下もジェット機のように高度20,000fから急降下するようなことは不可能で、1ターンに降下できるのは1高度域までとなっています。また一部の構造に問題のある機体については、急降下時に損害判定が必要となります。
というわけで上昇と高度のルールに面食らいますが、元のスケールが大味ですので、通常の戦術級空戦ゲームに比べれば大したことはありません。
◆探知と「タリー」
本作でも敵編隊を攻撃するためには、事前に目標を探知しておく必要があります。そして無線による情報共有などできない時代ですので、この探知は攻撃を試みる編隊自身が、5ヘクス以内の目視索敵により目標編隊を探知しておく必要があります(「タリー」状態)。そしてこの「タリー」は、編隊につきひとつの敵編隊しか保持しておくことができません。編隊間で情報を共有し、臨機応変に目標を変更することはできないのです。
◆ドッグファイト
さらに一旦発生した空中戦は、一方が攻撃を放棄して離脱に成功するまで、ターンをまたいで継続します(「ドッグファイト」状態)。敵編隊より速度に勝れば離脱は自動的に成功しますが、劣る場合は初期値50%からの離脱判定が必要となります。
空戦で相手にヒットを与えるためには機動性の高い機体が有利ですが、速度に勝る機体はそれを振り切って離脱することが可能です。そしていずれも劣る機体は、腹をくくってドッグファイトを挑むか、離脱のチャンスに賭けることになります。
大味な空戦ルールの中でも、機体の微妙な性能差が反映される面白いルールです。
これらのうち「タリー」による交戦目標指定と、「ドッグファイト」によるターンをまたいだ空戦継続のルールは、Downtownのオリジナルデザイナー、Lee Brimmicombe-Woodの手による第二次世界大戦を舞台とした航空作戦シリーズ、Wing Leaderにも引き継がれています。こうしたフォロワーによるゲームシステムのシステム発展と、その進化を取り入れた新たなシリーズという流れは、大変にエモいと思うのですがどうですか(だんだん早口になるオタク)。
◆Scenario 3 (Patrol) - 1917/03/09
というわけで、インストを経て今回は戦闘機同士の空戦シナリオをプレイ。英軍戦闘隊3編隊(各4機編制)の哨戒飛行を、リヒトホーフェン率いる第11戦闘機中隊の猛者(1編隊5機)が迎撃するというシナリオです。
結果は向かい風のなか戦線上空に飛来した英軍FE8隊をHalberstadt D.IIの迎撃隊が強襲。3編隊中2編隊との交戦に成功し、独軍の損害なしで3機を撃墜し、2機の撃破に成功。順当に独軍の勝利に終わりました。プレイ時間は3時間ほど。
本日のお題。インストで「そういうとこだぞ、T-Mo!」というツッコミか続く。 pic.twitter.com/KcMZWthC8c
— N村 (@enumura) August 9, 2020
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