「現代戦」ってどこまでですか？ WGAC2023

本記事は「War-Gamers Advent Calendar 2023」の12月2日分のエントリーです。

今期猛プッシュ中の第四次中東戦争ウォーゲーム「Valley of Tears」が「ヨム・キプール戦争50周年」のタイミングでリリースされたことから「『現代戦』の代表的テーマと思っていたのに、もう半世紀？！」とダメージを受けているウォーゲームおじさんです。

これに加えて今シーズンは現代戦テーマがらみで割合若手のゲーマーとの交流もあったことから、このところ各方面で「あなたの思う『現代戦』はどこから？」という話題を振っておりました。

問題の『現代戦』の上限は「今現在」ということで異論はないかと思いますが、下限となると意見は千差万別。ざっくり並べるとこんな感じですが、あなたが「現代の戦争」と言い張れる年代の下限はどのあたりでしょうか？

2010年代（約10年前）：ウクライナ騒乱
2000年代（約20年前）：対テロ戦争、イラク戦争
1990年代（約30年前）：湾岸戦争、ユーゴスラビア紛争、チェチェン紛争
1980年代（約40年前）：フォークランド紛争、イラン・イラク戦争、レバノン戦争、アフガニスタン紛争
1970年代（約50年前）：第四次中東戦争、第三次印パ戦争、中越戦争
1960年代（約60年前）：ベトナム戦争、第二次印パ戦争、第三次中東戦争
1950年代（約70年前）：朝鮮戦争、第一次印パ戦争、第二次中東戦争、台湾海峡危機
1940年代（約80年前）：第二次世界大戦、国共内戦、第一次中東戦争、インドシナ戦争

ちなみに最初の話題の第四次中東戦争（50年前）を「現代戦」と言い張った場合、1980年代に「1930年代（チャコ戦争！）も同時代」と強弁するようなもの、ということになります。イラク戦争（20年前）でも、1980年代にベトナム戦争の話をしているようなイメージでしょうか。これはギリギリありか？

根本的には第二次世界大戦以降の区分である現代(Contemporary)が、同時代史としての意味を含むことから必然的に伸び続けていることによる問題ですが、もはや「現代戦」という一言だけでは共通認識を持つことが難しくなっているのがお解りいただけるかと思います。ちなみにいろいろ聞き取りをしたところ、おおむね当人が十代頃の時代、自分が体験してきた時代に「今と連続する時代である」として線を引く方が多い、という印象でした。同時代史ですから当然ですね。

もちろん当人の感覚を否定するものではありませんし、グループ内での共通認識が取れていれば問題ありません。とはいえそうでない方との会話、特にウォーゲーム・ソムリエの皆さんが「現代戦に興味があるんです！」という若人に突撃する場合、まず認識のすり合わせをした方がいいんじゃないかな？という、司書ウォーゲーマーおじさん（50代）からの提案でした。レファレンス・インタビューその1、まず相手の意図を確認せよ。

ちなみにボード・ウォーゲーム系サイトの老舗、Consimworldの時代分類(→)は、「現代：Contemporary（現代）」の下に「冷戦：Cold War (WWII through 1990)」「冷戦後：One Less Superpower (post cold-war era)」「仮想戦：Potential Conflicts」という構成です。ざっくりとした分類としては悪くないんじゃないかな？と思います。