Counter-Air : SoGC 2024/04/07
今年度最初の対戦ゲームは、その筋の泰斗の最新作から。
Counter-Air - Fight Club (→)
King's College LondonのWar Studies Departmentの長としてウォーゲーミング教育の普及に長年活躍され、先年退任されたPhilip Sabin教授の最新作。「ウォーゲーム経験のない学習者に戦闘シミュレーションの基本的概念を紹介する」という目的で作成された簡易ウォーゲームで、お題は架空の地域大国同士の攻勢対航空作戦(OCA)の防勢航空作戦(DCA)。ゲーム自体はPnP素材またはプレゼンテーション用のPowerPointのファイル(!)として、ウォーゲーミング普及団体「Fight Club」のサイトで配布されています。
実際のプレイでは、攻撃側(ブルー国)が、配下の航空部隊を「護衛・制空戦闘」「SEAD」「高高度精密爆撃」「低高度爆撃」の各任務に配分。対する防御側(レッド国)が、航空部隊の出撃の有無、SAM部隊の迎撃の有無を決定。両者の戦力配分が決定したところで、制空戦闘、SEAD、防空部隊(AAA/SAM)と航空基地に対する対地攻撃を順に解決。これで1回分のレイド(ターン)が終了し、この5回分の累計損害で勝敗を争います。このようにゲームの内容は現代作戦級ウォーゲームの航空作戦パートのみを抜き出したような恰好で、個人的には最近「Battalion Combat Srries」にアドオンとして航空作戦を導入した「Valley of Tears」のルールを連想しました。
またダイスを使用しない、極限まで削ぎ落された「chess-like」な交互攻撃、自動ヒットのルールは非常に軽快で、1ターンのプレイ時間は3-5分程度。インストから終了まで30分もあれば十分に決着します。インストラクター向けのガイドには、2時間の講義で「PowerPointで投影したデモゲーム」「受講者同士の対戦」「対戦結果の振り返り」「陣営を入れ替えた受講者同士の再対戦」「入れ替え戦を踏まえたディスカッション」というプログラムが紹介されているという、至れり尽くせりの内容です。
また個人的にツボだった記述が、ダイスを使用しないシステムについて「ウォーゲームなんて所詮は運次第」という偏見を避けるため、あえてこのようにシステムを採用した、というノートでした。ああ、教育現場でいろいろ苦労されたんだろうなぁ、と思わせる一言でした。
今回はForger氏をお相手に、防空側レッド国を担当してのテストプレイ。マップはオリジナルのものではなく、先週の坂戸例会で本作を紹介したI氏が、早速手を入れてきた改良版。ゲーム内のほとんどの処理がマップ上に記載されており、ウォーゲーマーならインスト1分もあながち冗談ではない優れものです。
ゲーム結果の方は、レッド国SAM部隊は壊滅したものの、航空隊の過半を温存して防衛成功。インストからのプレイ時間は30分弱で、その後はギャラリーを交えてゲーム内外の戦術やゲームデザインについての侃侃諤諤の感想戦となりました。手軽で見通しも良く、プレイ後に一言いいたくなるところはセービン教授の意図通りの内容でした。デザイン意図のウォーゲーム未経験者にも、テーマに疎いウォーゲーマー向けの現代航空作戦入門にもお勧めの小品です。
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