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The Fate of All : 山田会 2024/08/17

山田洋行氏とのこの夏の課題は、半世紀前の古典にインスパイアされたという古代戦キャンペーン。

The Fate of All - Thin Red Line Games ()

山田洋行氏提供。ギリシャからバビロンまでのオリエントを4枚のマップに収録し、マケドニア軍の小アジア侵攻からディアドコイ戦争序盤までをキャンペーンシナリオと4本のシナリオでプレイする古代戦役級。

「The Conquerors」(SPI,1977)に触発されたという開発経緯から、基本的なゲームシステムはへクスマップに兵科別ユニット。指揮官のみ移動力を持ち、戦闘ユニットとスタックして軍を編成。指揮官ごとに移動し、移動力を消費して戦闘を仕掛ける一種の行動ポイントシステム。ちょっとした会戦級ゲームが始まる戦術戦闘ルールはおいておくとして(合計戦力CRTの簡易版あり)、ここまではありがちな古代戦役級ゲームなのですが、本作の特徴はユニークかつ厳しい補給システムにあります。

本作では各指揮官は30移動力を持ち、配下の軍勢を率いて移動や戦闘を実施します。ちなみに1ターンは1か月ですので、1移動力毎に1日分の活動に相当するという大変わかりやすいイメージです。そしてこの際一定規模以上のスタックは、10移動力の消費毎に即座に補給ポイントの供給が必要となります。デザイナーズノートによるとこれは「各隊が自前で携行している食料を使い果たした状態」とのことです。厳しく思えますが、デザイナーはこれを「5-6日分」と推定しているため、かなり甘めのレーティングです。これに加えて移動フェイズの終了時には、移動の有無にかかわらずすべてのスタックは同様の補給ポイントを支給しなければなりません。したがって30移動力の全力で移動したスタックは、移動中の3か所と、フェイズ終了時の所在を合わせた合計4回の補給が、それぞれの場所で必要となります!

そして問題の補給ポイントは、以下の三種類の手段を組み合わせて調達されます。

まず一番穏便な方法は、支配下の都市から穏便に買い上げる「要請」です。移動経路中の都市で資金を支払い、補給ポイントを獲得します。しかし都市の備蓄には制限があるため、各都市で「要請」を実施できるのは1ターンに1回のみ。その量も潤沢ではありません。例えば今回のプレイで登場したパルメニオン率いるマケドニア軍小アジア支隊は、この補給チェック毎に2ポイントの補給を必要とするのに対し、最も一般的なD級都市の各ターンの供給能力は1ポイントのみ。これでは到底賄うことができません。

二番目の方法は、支配下の都市からの「略奪」です。こちらは判定次第でおおむね「要請」の1~2倍程度の補給ポイントを引き出せますが、実施すればもちろん都市は疲弊し、外交的にもかなりの悪影響が生じる最悪の手段です。

となると補給の本命は、周辺農地からの「徴発」です。これは対象となった通過中の州の「徴発値」と、スタックに所属する「軽騎兵」の規模に依存します。行軍する軍隊の周辺に軽騎兵を走らせ、広い地域から食料を調達するわけです。この行為は取りすぎると州の「徴発値」自体を低下させる以外は悪影響はなく(低下状態は収穫期の4月ターンにリセット)、本作での最も基本的な補給手段となっています。また州の「徴発値」は季節で変動します。先の小アジア支隊の場合、軽騎兵も少なく徴発能力が低いため、冬季の移動はほぼ不可能。適切なタイミングでスタックを分散し、冬営体制に移行する必要があるという感触でした。さらに「徴発値」は両陣営で共用されるため、敵に先んじて強引な徴発を繰り返すような焦土作戦も再現されています。

もちろん補給ポイントを補給段列や艦隊で輸送し、現地で消費することも可能です。しかし前者は機動力がかなり制限され、後者はもちろん沿岸でしか活動できません。そして当然ながら、運ぶべき補給ポイントの調達方法は上記の方法に限られます。「後方から恒常的に追送される補給ポイント」は存在しないのです。

このように騎兵による「徴発」を基本とする補給システムから、本作の軍隊は可能な限り裕福な土地を、確実に最低限の補給が確保できる保険として都市伝いに移動するのが基本的なムーブとなります。また補給ポイントを支払わなかった場合に「消耗チェックに成功すればステップロス不要」のような救済ルールは存在しません。そして強制的、自発的を問わず、解散した戦力に応じて手切れ金を支払えない場合、陣営の士気が低下するというペナルティも存在しています。

実際のプレイでは各ターン、各移動に必要な補給ポイントをいかに調達するのか?補給の確保がプレイの大半を占めているといっても過言ではありません。このあたりは好みの分かれるところで、おそらく大半のゲーマーは受け入れがたい内容かと思いますが、個人的には個々のルールは現実の何を反映しているのかが明確で納得感が高く、悩ましくも大変楽しめる内容でした。このあたりのどんな背景をどうゲームに織り込んだのかについてはデザイナーもノリノリで語ってくれていますので、興味のある方はこちらへ。

The Fate of All, Designer’s Notes, by Fabrizio Vianello ()

 

Ten Thousand, Again - Parmenion’s preparatory expedition in Anatolia, 336 BCE

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というわけで今回は、パルメニオン支隊の小アジア作戦シナリオでのインスト戦。N村はヘレスポント海峡から討ち入るマケドニア軍を担当しました。結果は海峡の都市、アビドスを強襲で下したパルメニオン隊は、最終目標をエフェソスに定めて南下。沿岸のスミルナに集結していたメムノン率いるペルシャ軍を会戦で破り、こちらも強襲で攻略。同地を前進基地として、強襲の損害を補填している間に季節は秋に。冬営拠点分散のため近郊のカイムを降伏勧告で下したあたりで、エフェソスを拠点に再編が終了したらしいペルシャ軍が再来します。

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先の会戦で軽騎兵、軽歩兵中心のペルシャ軍に対し、優勢な重歩兵でそれなりの勝負ができると踏んだパルメニオンは、渡河点での迎撃を決意。スミルナ会戦の火蓋が切られます。ところがふたを開けてみれば、メムノン隊は新大王ダイオレスからの下賜金(シナリオ初期資金の3倍!)を惜しみなくつぎ込んだ予想外の大軍。そういえば軽騎兵で相手のスタックを偵察できるルールがあったよね、と思い出すも後の祭り。優勢な騎兵と軽歩兵に包囲されたパルメニオン隊は、後退もままならず第3ラウンドで敗走。圧倒的な騎兵による追撃でパルメニオン隊は全滅し、野戦軍の壊滅によりマケドニア側の投了となりました。これはひどい。

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コメント

SPIのThe Conquerorsが好きなゲームでしたが、あのゲームのマップは同社のWar in Europeと同じスケールでマップを流用してポエニ戦争をやったりとかしてました。The Fate of Allもシリーズ化を期待しています。

投稿: 市川定春 | 2024年8月21日 (水) 10時05分

SPIの使い回しコンポーネントにはそんな活用方法が。本作、基本システムは汎用性がありそうな感触でしたので、シリーズ展開も期待したいですね。

投稿: N村 | 2024年8月21日 (水) 20時42分

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