LCIP, Taal's Fury : GCS 2024/11/23
新作バルト海のリリースも近づき、ルールのアップデート作業にいそしむ今日この頃。新作の前に翻訳から一年近く塩漬けになっていた大型シナリオに加減に手を付けておこうと、お試し会を開催。
Littoral Commander, Taal's Fury - Ian Brown (→)
BoardGamneGeekに投稿された「Littoral Commander」のファンメイドのキャンペーンシナリオ。とはいえファンメイドといっても、製作者のIan T. BrownはMCUPからこんな著作(→)もあるその筋の方です。
キャンペーンの設定は、マニラ南部のタール火山の噴火とそれに伴う津波により、南シナ海沿岸全体に大きな被害が発生。インフラの壊滅したマニラから脱出したフィリピン政府は米国に支援を要請。また親中的な野党は中国との連携を求めた……というもの。この状況で沿岸諸国の警察力が壊滅状態となった南シナ海で、復興海路を脅かす海賊の掃討作戦のシナリオ1、反政府ゲリラ「新人民軍」の跋扈するルソン島北部で、内陸部へと援助物資を届けるシナリオ2が同時並行的に発生。各現場で衝突した米中両国が、南シナ海とルソン島で前面衝突に至るシナリオ3という3本で構成。
シナリオ1/2では米中は直接交戦はせず、それぞれ進行役の担当する海賊と新人民軍という第三勢力、暴力的非政府集団(Violent Non State Actor)が登場するのがユニークなところ。本作ではこのための運用ルールに加えて、追加のユニットとJCCも収録されています(要工作)。デザイナーの意図としては、プレイヤー間の直接攻撃のない第三勢力掃討戦の序盤2戦で参加者に経験を積んでもらい、本戦の第3戦に挑む、というステップアップを見込んでいるとのことです。
ちなみにシナリオ1/2の規模はさほどではないのですが、各シナリオには固定されたOOBが存在しないのが少々問題。キャンペーンの最初にシナリオ1/2、および予備にユニットとJCCを分配。生き残った部隊と予備の追加投入でシナリオ3を戦うという構成です。このため序盤のシナリオだけ試すことができないのが、つまみ食いには少々難問でした。今回は両陣営にシナリオ用のタスクフォースを複数用意し、ここから登場部隊を選択してもらう形式でプレイしています。
Black Flags Over Singapore
というわけでシナリオ1のマラッカ海峡~南シナ海の海賊掃討戦を、今回はN村を海賊兼進行役として、米軍(I氏)、中国軍(Forger氏)での人柱3人戦。米中はそれぞれ海賊艦艇の撃破と、ハイジャックされた民間船の奪回で得点。これで同地域対する「地域影響力」がアップし、最後の米中対決の準備を有利に進めることができる、という仕掛けです。
対する海賊側は、襲撃を担当する襲撃艇、ダミー兼自爆ボートのデコイ、この両者の活動を支援する母船、そして自爆ドローンと水雷を搭載した切り札である武装潜水艇の各ユニットで構成されています。基本的には襲撃艇が海上へクスで「略奪」や「ハイジャック」のアクションを実施すると、仮想の商船が襲われたものとして米中の影響力が低下。また自爆ボードや対艦ドローンJCCなどで米中の部隊に損害を与えると、該当陣営の影響力が低下するという仕組みです。
また迎撃能力もない海賊陣営の艦艇は、ミサイル一発で除去される貧弱さですが、こうした長距離攻撃が実施された場合、付近の民間船舶に対する付帯的損害の有無を判定する必要があります。こうした角の立たない攻撃方法としては、艦砲による直接砲撃のルールが用意されていますが、この射程は隣接へクスのみ。迂闊に近づけば自爆ボートの接近を許すことになってしまいます。またハイジャックされた商船に対しては一切の攻撃が禁止され、こうなると艦艇による臨検や特殊部隊の襲撃で奪回する必要があります(いずれも回数制限のあるJCCで実施)。
こうした抑制要素は設定されてはいますが、海軍艦艇と海賊船を比較すれば武装、速度、索敵能力とも話にならないことには変わりなし。今回は第2ターンまでにすべての海賊母艦が撃破され、最終第7ターンを待たずに第5ターンで襲撃艇、潜水艇も全滅。ここで協議終了となりました。
とはいえやりようによっては一矢報いられないわけでもなく、今回のプレイではマラッカ海峡で母艦の護衛についていた潜水艇が、砲撃に近づいてきた米駆逐艦を撃破。また南シナ海では自爆ボートが米駆逐艦の迎撃能力を喪失させたことろに、虎の子の横流し対艦ミサイル(JCC)とのコンボでこちらも撃破。21世紀の海賊怖い!という惨事となりました。
シナリオの完成度としては第三陣営が追加されたことによるシステム面の齟齬や、得点のバランスなど、調整の余地はあるという感触です。しかしハイジャックと臨検の要素など、暴力的非政府集団との対決ならではの新要素はCOIN者としては待ってましたというところ。陸戦メインのルソン島シナリオも期待大、という感想戦となったのでした。
203x年マラッカ海峡。フィリピンでの大規模噴火の影響で壊滅的被害を受けた南シナ海で、復興需要の海運を狙う海賊が増大。この対策のため、米中は鎮圧部隊を派遣した。 pic.twitter.com/d0VuGf6ewJ
— N村 (@enumura) November 23, 2024
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