「大隊級戊辰戦争:東山道戦記」こぼれ話
本記事は「War-Gamers Advent Calendar 2024」12月5日分のエントリーです。
ブログにはレポートを上げていませんでしたが、個人的に2024年に最も力を入れたウォーゲームといえば「1868戊辰戦争」の派生作品である「大隊級戊辰戦争:東山道戦記」でした。とはいえこれを今年のベストウォーゲームに挙げるのも躊躇われますので、この機会に開発の経緯を紹介しておきます。
「大隊級戊辰戦争:東山道戦記」第三惑星員会(仮)
ひとまずテスト用セットの準備完了。 pic.twitter.com/HKsZlvN0SC
— N村 (@enumura) July 6, 2024
◆そもそもどういうゲームなの?
本作は「1868戊辰戦争」のカウンターを流用し、同戦役の諸戦闘をシナリオ形式でプレイする追加モジュール。「1868戊辰戦争」の各戦闘を別マップで詳細にプレイするわけではありません。カウンターを流用した独立したゲームです。元ゲームのコンポーネントを流用することから、プレイには「1868戊辰戦争」が必要な追加モジュールという建付けになります。
そして会戦級ゲームとしてのゲームシステムが「大隊級戊辰戦争」、今回のシナリオ集のタイトルが「東山道戦記」という構成です。ゲームとしての規模感は、A4またはA3マップに片軍あたり5~15ユニットというミニゲーム集になります。
「1868 戊辰戦争」のユニットを流用する会戦ゲームのモジュールというのはどうですかね。
— 司史生@なんとか生きている (@tsukasafumio) June 13, 2024
NAWみたいな簡単ルールにA4サイズぐらいのミニマップで、1時間ぐらいで遊べるゲームの6種類詰め合わせ。
1ヘクス=500mのA4サイズに宇都宮・安塚・今市・市川船橋のGoogleマップを落とし込むとこんな感じ。https://t.co/l3DkCPsu9F pic.twitter.com/C2ogpPFFVr
— 司史生@なんとか生きている (@tsukasafumio) June 13, 2024
制作の発端はこのあたり。半ば夢想企画として司史生氏がアップしたマップ案に対し、N村が勝手にシステムを作成してテストプレイ。以下テストプレイのフィードバックからマップを更新→更新マップでテストプレイ→マップ更新→以下略、という二人三脚で、システムとコンポーネントの開発が進みました。
こうした紆余曲折と人柱の皆さんのご協力で、ゲームシステムとシナリオ集はいったん完成。しかし司氏の急病と「鳥羽伏見の戦い」の追加構想が加わり、最終工程はちょっと休止中。来年中に公表できればいいなぁ、くらいの皮算用となっています。
開発中の諸々の試行錯誤にご興味がある方は、以下のデザイン日記も併せてご覧ください。
「大隊級戊辰戦争:東山道戦記」試行錯誤中 (→)
◆「縛りプレイ」のデザイン
ところで本作のデザインにおける特徴は「元ゲームのコンポーネントを流用してまったく別のスケールのゲームを作成する」という縛りプレイです。前作「1868戊辰戦争」が予想外の好評となったのは嬉しい誤算でしたが、制作関係者としては急な増刷により刊行者に大きな負担を負わせることになったのが心残りでした。
このため今回の企画では、前作のカウンターの流用を前提に「追加するコンポーネントはプリンターで出力できるもの(マップ、冊子、等)に限定する」という枷を課し、制作コストを最小化する方針でゲームとコンポーネントをデザインしています。このミニマム設定により、最悪でもPDF版で頒布し、マップさえ印刷できればプレイできる見込みです。
そしてこのユニット流用縛りからの逆算でスケールが定まり、既存のユニットで戦闘序列が再現可能かつ、ゲームとして成り立つ数のユニットが並べられる戦場をチョイスしてゆきました。しかし戊辰戦争の諸戦闘、意外に規模が小さく選定には苦労しました。例えば当初はウォーゲーム史上初の「市川船橋戦争」シナリオを!という構想もあったのですが、落とし込んでみるとA3マップに両軍とも3-4ユニットという大変しまらない内容となり、泣く泣く断念。最終的に北関東を北上する大鳥軍と、それを追う東山道軍(伊地知隊)のキャンペーンを追いかけ、白河決戦で〆る連作シナリオ、という内容に落ち着きました。まぁ司氏もN村も北関東出身で、以前からこの戦役に思い入れがあった、という事情もあります。
◆大隊級で戊辰戦争?
というわけで本作、テーマに合わせてゲームを作成したのではなく、コンポーネントに合わせてゲームを作成するという少々いびつなデザインとなっています。この実際のところ司氏もN村も「大隊級戊辰戦争」というスケールは戊辰戦争の会戦再現にはマッチしておらず、本命は一回り小さなスケール…(当時はそのような呼称ではありませんでしたが)中隊・小隊級のシステムだろうと考えています。
とはいえ戊辰戦争の戦術戦闘自体に、需要があるのかは未知数(小山宿の戦いに需要あります?)。今回のミニゲーム集を撒き餌として、反応次第で改めて本格的な会戦級ウォーゲームに着手できたらいいな、と夢想しているところです。公表できましたら、皆様の反応をお待ちしております。
◆ライフル散兵の時代
ところでゲームシステムとしての「大隊級戊辰戦争」ですが、ライフル散兵時代の技術・戦術に格差のある軍隊同士の戦闘を念頭にデザインしています。システム名に反して、前述の戦場規模の問題から戊辰戦争テーマでのシリーズ化は難しいと考えていますが、砲兵を上方修正して騎兵を追加すれば、19世紀の諸戦争に拡張できそう。ついでにエルフの森くらいは焼けそう……とは考えています。我こそは!という方は是非。
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