NATO Division Commander : SoGC 2025/02/01
2025年最初のソフィアゲームクラブにて、半世紀前の問題作(魔改造版)の人柱会を開催。
NATO Division Commander, Leadership under Fire - SPI (→)
このところさまざまな前衛作品でお相手いただいているI氏の提供。1980年代想定の第三次世界大戦を背景に、西ドイツのアルスフェルト~ギーセン街道周辺での師団レベルの戦闘を想定した作戦級ウォーゲーム。
本作については、真面目に解説を始めるときりがありませんのでザックリと。ウォーゲームとしてのスペックは、師団フォーメーション、大隊ユニット、1マイルへクス、8時間ターンの作戦級。ユニット運用の基本システムは、移動力を消費して戦闘を実施するアクションポイントに部隊疲労を追加したもの。
さらにユニットは与えられた任務を反映した個々に防御4種類、攻撃3種類、その他3種類の「モード」を持ち、これにより能力が大きく変動。そしてこのモード変更には司令部のスタッフ能力により判定が必要で、その成否にかかわらず疲労チェックが要求されます。場当たり的に命令を下しては、戦う前から部隊が疲弊してしまうのです。ある程度先を読んだ部隊運用が要求されます。
これだけでも十分に重厚な内容なのですが、本作にはオプションとしてダブルブラインドでプレイする「コントローラー・ゲーム」が収録されています。これは一方のプレイヤーがプレイを統括する審判、ゲームマスターである「コントローラー」としてワルシャワ条約軍側担当し、プレイヤーであるNATO軍側の偵察状況により適宜WP軍ユニットを配置してゆくというもの。ここまでくるとゲームというより演習です。
さらに今回はコントローラーを担当するI氏持ち込みのPCにより、コントローラー用マップとしてVASSALモジュールを使用。ハイブリッド環境でのプレイを体験させていただきました。
◆Advance on Fritzlar
というわけで、今回は本作の入門ゲームである「フリッツラーへの進撃」にて、コントローラー・ゲームのセッションを開催。プレイヤーN村の担当するアメリカ軍第4師団第4旅団に対してコントローラーのから提示された任務は、マップ北端で孤立したフリッツラー航空基地への救援または、マップ中ほどのマールブルグとツィーゲンハインのWP軍補給集積所の破壊。位置関係では菱形の下の頂点から米軍旅団がマップに進入し、上の頂点がフリッツラー航空基地、左右の頂点がそれぞれマールブルグとツィーゲンハインとなります。
状況を伝えられた旅団長の方針は、旅団(戦車大隊x1、機械化歩兵大隊x2、偵察中隊x1)一丸となってのフリッツラーの救援に決定。部隊規模と時間制限(2日間5ターン)から、二拠点の攻略は難しく、予想される敵戦力(機械化歩兵連隊2個)から接近経路全体が封鎖されている可能性は低く、浸透の余地は十分にあるという判断でした。以下は実際のプレイでの経過です。
・1日目午前
旅団は索敵機動モードで、マップ中央のマールブルグ~ツィーゲンハイン街道に到達。ここまで敵影はありません。あまりに順調な進軍ペースに、旅団長は疑心暗鬼にかられます。
・1日目午後
ここで旅団は東西に並行するふたつの街道に部隊を分割。司令部能力を割り振った作戦レベルの偵察でもWP軍の所在がつかめず、ふたつのルートからフリッツラーに通じる経路を探ろうという作戦です。このうち西側の街道を進んだ支隊は、フリッツラーまで4マイルの地点で前衛偵察中隊がWP軍部隊と接触。戦力に劣る支隊は交戦を避け、後続の機械化歩兵大隊を森林地帯の間道へと迂回させます。
対する旅団主隊は、メングスベルグ北部の隘路で弱体なWP軍部隊と鉢合わせ。主隊前衛の戦車大隊が即座に攻撃を開始しますが、司令部と判明したWP軍部隊は強力な支援で頑強に抵抗。後続の機械化歩兵大隊による側面攻撃で、ようやくこれを撃破しますします。前衛を交代した機械化歩兵大隊は隘路を抜けますが、付近にこのWP司令部の配下らしき敵影は見当たらず。旅団司令部は困惑が広がります。
さらにこの頃、フリッツラー西方の支隊偵察中隊は、WP軍機械化歩兵大隊による連続攻撃で敗走。壊滅寸前の大損害を被ります。またフリッツラー守備隊より、基地東側面に別の機械化歩兵大隊が出現したとの連絡が入ります。
・1日目夜
旅団は戦闘で疲弊した偵察中隊と戦車大隊を休養させつつ、残る両機械化歩兵大隊により前進を継続。間道に入ったことで敵部隊とすれ違う格好となった支隊側は、無事にフリッツラー西側面に到達。また南側から新たな敵部隊の側面に躍り出る格好となった主隊側は、この敵部隊と交戦。基地守備隊の情報により先に敵部隊を発見していたことから、この攻撃は奇襲となりWP軍部隊は一撃で敗走。二方向からフリッツラー基地に到達したことで、任務を達成した米軍の勝利に終わりました。プレイ時間は2時間ほど。
・デブリーフィング
感想戦では、当然ながら旅団主隊が接触したWP軍司令部は何者だったのか?WP軍部隊はどこに展開していたのか?という話題に。実はWP軍部隊はフリッツラーを緩く囲む攻囲部隊のほかは、弱体な守備隊がマールブルグとツィーゲンハインを拠点防御していたとのこと。ここでマールブルグ~ツィーゲンハイン街道に有力なNATO軍部隊が出現したことから、フリッツラー攻囲部隊から一部を抽出してツィーゲンハインに派遣。この隊列がツィーゲンハイン方面に通り過ぎた側面から、後続の司令部に米軍主隊が鉢合わせしたとのこと。なるほど、これはダブルブラインドのコントローラーゲームでしか体験できない貴重な体験でした。
またコントローラーゲームという形式から、個々の細かい処理はコントローラーに丸投げし、プレイヤーは部隊運用に集中することができたため、ややもすれば「プレイ不可能なビックゲーム」などと嘯かれる本作を非常にスムーズに体験することができました。もちろんコントローラーの負荷は大変なものになりましたが、本作のエッセンスに触れるという意味では、通常の対戦ゲームよりむしろこのスタイルの方が適しているのではないか?と思います。
なにはともあれ、この貴重なセッションを機材からインストまで準備いただいたI氏には感謝です。ご対戦ありがとうございました。
198x年、西独マールブルグ付近。前線で孤立したフリッツラー航空基地を救援するべく、アメリカ軍第4師団は第4旅団を派遣した。NATO Brigade Commander pic.twitter.com/ovNfKrYIWH
— N村 (@enumura) February 1, 2025
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コメント
今回、コントローラーの作戦が裏目に出てしまいましたが、司令部を含む部隊を移動させる際に、ドクトリンで示されているように、司令部を大隊で挟んで移動しなかったことが反省といえるかもしれません。
とても、基本的なことかもしれませんが。逆に言うと、ドクトリンの有用性が証明された例かもしれないと思いました。
投稿: I | 2025年2月 4日 (火) 19時52分
改造して何とかしたくなるポテンシャルは体感できました。
コントローラーお疲れ様でした。
やはり現実で想定されている手立てが有効なのは良いゲームですね。
投稿: N村 | 2025年2月 4日 (火) 21時05分