「大隊級戊辰戦争:東山道戦記」ゲームレビュー
以前の記事(→)は制作裏話的なコラムでしたので、今回はもう少し真面目にレビューしておきます。
「大隊級戊辰戦争:東山道戦記」第三惑星委員会(→)
大隊ユニットのスケールで戊辰戦争の諸会戦を再現する会戦・戦術級ゲームシリーズ「大隊級戊辰戦争」とシナリオ集「東山道戦記」のセット。戦役級戊辰戦争「1868 戊辰戦争」のコンポーネント(カウンター)を使用し、北関東を北上する大鳥軍と、それを追う東山道軍(伊地知隊)の一連の戦闘を白河決戦で〆る、シナリオ形式の会戦・戦術級ウォーゲームです。収録シナリオは以下の通り。システムとシナリオをN村が、コンポーネント・デザインを司史生氏が担当しました。
- 第一次宇都宮攻防戦(大鳥前軍対東山道軍香川派遣隊)
- 安塚会戦(大鳥軍対河田救援隊)
- 第二次宇都宮攻防戦・前半戦(東山道軍第三救援隊対大鳥軍)
- 第二次宇都宮攻防戦・後半戦(東山道軍救援諸隊対大鳥軍)
- 第三次白河攻防戦(東山道軍伊地知隊対会仙磐軍)
- 第二次今市の戦い(大鳥隊対東山道軍板垣隊)
- 第四次白河攻防戦(会仙磐軍対白河口軍)
- 第六次白河攻防戦(会仙磐軍対白河口軍)
前述のように「1868 戊辰戦争」のカウンターを流用しますが、同ゲームとの連結要素(「1868 戊辰戦争」の戦闘をこちらの戦術戦闘マップで処理する、等)はありませんので念のため。また「1868 戊辰戦争」に大量に収録されていたブランクカウンターを「戦力マーカー」として使用します。まだ切ってない人、捨てないでください。
戦術級戊辰戦争ゲーム『東山道戦記』セットできた~。
— 司史生@なんとか生きている (@tsukasafumio) March 8, 2025
とりあえず週末は一式ジップロック作業して、それから頒布方法を考えます(w pic.twitter.com/V7Pnvo9XLa
コンポーネントはA4サイズの安塚、宇都宮、今市の3枚とA3サイズの白河の計4枚のマップを収録。シリーズルール「大隊級戊辰戦争」とシナリオ集「東山道戦記」の冊子2冊。カウンターを流用せずにプレイしたい方向けの自作用カウンターシート(上写真右中段)、という構成です。要工作になりますが「1868 戊辰戦争」をお持ちでない場合もプレイは可能です。
◆大隊級戊辰戦争
シリーズルールのウォーゲームとしての基本的なスペックは、30-60分ターン、500mマップ、大隊ユニット(1戦力:50-100名)、チット引きランダムシークエンス、変形弱ZOC、隣接メイアタック、砲兵のみ2ヘクス射程、ダイスパワー戦闘というところ。難易度は「NAWシステムに毛が生えたくらい」を想定しています。会戦の規模もさほど大きくないため、小規模な安塚会戦(双方4ユニット)でプレイ時間30分以下、最大の白河攻防戦でも2時間程度を想定しています。
テストプレイ午前の部。安塚、第一次宇都宮、第二次宇都宮午前x2 pic.twitter.com/6dPZV6mxrF
— N村 (@enumura) July 14, 2024
シークエンスは陣営ごとに「全軍で戦闘or回復」「全軍で移動」「1ユニットのみ戦闘or回復or移動」の3種類、両陣営合計6枚のチットをカップから引いてくる、フェイズの構成がランダムに変化するタイプのチットプル。特徴としては毎ターン最後のチットをその場で使用せず、次のターンの最初に使用するという「Grand Tactical Series」方式のチットプルが珍しいところでしょうか。ダブルムーブの綾や、最終ターンの紛れを生み出すことを意図しています。
◆ZOCは小銃火力
そして移動・戦闘の肝となるのは、変形弱ZOCである「火力範囲(Fire Zone)」のシステム。本作では敵FZへの侵入と離脱にあたり、該当ヘクスに及ぼされている敵FZを有するユニットのうち、最も強力な「火力」が追加コストとして加算されます。背景的には当時の小銃の有効射程に相当する制圧範囲と、それに対応するための戦闘隊形への転換、さらに続く射撃戦による拘束をあらわすメカニズムになります。
具体例としては、本作のユニットの移動力は一律4MP、平地の移動コストが2、「1868 戊辰戦争」からの流用で散兵訓練を受けた標準的な歩兵が2火力というレーティングです。この状態での攻撃ユニットは「敵FZ手前まで移動して停止(行軍からの戦闘展開)」「平地2+火力2のコストで敵に隣接(攻撃前進)」「戦闘チットで戦闘(敵陣に突撃)」という手順を踏むことになります。離脱にも同様のコストがかかりますので、いったん交戦状態となった部隊の転進は困難。対して近代散兵の訓練を受けていない火力1の部隊が相手であれば、容易に肉薄して拘束することが可能です。
また本作では、ユニットが全移動力を消費することで1ヘクスのみ移動するという、定番の「全力移動」ルールも存在しており、地形が険しい場合や熟練散兵部隊(火力3)に接敵する場合に活用されます。ただし「全力移動」を使用しると必ず士気判定が実施され、失敗した場合は「制圧(攻撃不能、FZ消滅、MP1)」またはステップロスや退却が強要されます。対して士気の高い部隊であれば、敵火力をものともせずカジュアルに肉薄、FZtoFZで浸透してきます。
そしてこの「移動力が不足する場合は全力移動が必要」というルールは、戦闘後前進(強制)や退却も「1ヘクス移動」とみなされ適用されます。このため敵部隊を撃破して戦闘後前進する場合でも、隣接する敵部隊が展開するFZにより、攻撃側が士気判定からの制圧や退却を被ってしまう可能性があります。退却すれば攻撃失敗ですし、敵陣で制圧状態となってしまえば続く相手側の逆襲で陣地を叩き出されてしまうことでしょう。
個人的に本作で表現したかったのがこの部分。「攻撃失敗」という結果のうち「突入できたが逆襲で押し返された」というシチェーションを、盤上の動きでで見せながら、いかに簡潔に表すか?が本作の裏テーマでもあります。
最後の戦闘システムは、ユニットごとに目標を指定して戦力数のダイスを振り、火力以下でヒットを得るダイスパワー方式。防御側は地形効果を加味した数のダイスで、士気以下を出したダイスの数だけヒットを相殺。残ったヒットを制圧、ステップロス、退却(前述の強制1ヘクス移動)で消化します。ちなみに戦力(兵数)は、ユニットの下に積んだブランクカウンターの枚数で表現する物理ステップロス方式です。これもどこかでやりたかった小ネタ。以上、基本的なルールはこれで終了です。
◆北関東戦役
というわけで「NAWに毛が生えた程度のルール」で、この時代の兵器や訓練の差を手軽に体験できる会戦級ウォーゲームを目論んだのが「大隊級戊辰戦争」システムです。多彩なシナリオも収録できましたので「なんでそうなるの?」という謎展開連発の北関東戦役の諸戦闘をお楽しみいただければ幸い。個人的なお気に入りは「松が峰門ピンポンダッシュ」こと「第二次宇都宮攻防戦・前半戦」と「攻者1/3での包囲戦」の「第三次白河攻防戦」です。おかしいでしょ君たち!
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