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Pax Illuminaten - ゲームレビュー

時は1776年。欧州には啓蒙思想が広まり、近代への舞台が整いつつあった。しかしバイエルンには神聖ローマ帝国が君臨し、こうした帝国の権威を弱体化させるような革新的な思想の広まりを弾圧していたため、啓蒙的な改革をもくろむ人々は、ひそかな活動を強いられていた。こうした中、インゴルシュタット大学のアダム・ヴァイスハウプト教授は、バイエルンの地を啓蒙主義の理想に作り替えるため、そのビジョンを現実化するための秘密結社を結成した。彼の団体はイルミナティ教団と呼ばれていた。
「Pax Illuminaten」では、各プレイヤーがイルミナティ教団のアダム・ヴァイスハウプトの高位の弟子たちで構成されたアレオパゴス評議会の一員となる。彼らは教団の勢力を拡大するために、同志の勧誘計画を遂行する。プレイヤーはヴァイスハウプトの計画に寄与しつつ、互いに競い合いうことでアレオパゴス評議会のより高い地位を獲得するべく奮闘する。

Pax Illuminaten - ION Game Design ()

「PAX」シリーズの小箱新作。イルミナリティ教団の幹部として、自派の拡大を目指す秘密結社の内部抗争ゲーム。デザイナーのOliver Kileyは10年ほど前に「Hegemonic」「Shifters」などの作品もありますが、ION系列では初登場です。

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ゲームの内容は、「貴族」「職人」「法律家」「芸術家」「学者」「聖職者」の属性が記載された当時実在の「著名人」カードを裏面でマップ(イルミナリティ教団とその勧誘対象)を作成。これに対してプレイヤーは「スカウト」アクションでカードを公開し、盤面を確定してゆきます。公開された著名人カードは、隣接する属性を同じくする著名人と「ロッジ」とよばれるグループを形成。さらにプレイヤーは「インフレンス」アクションで著名人に自派の「影響」トークンを配置し、自派閥に引き込んでゆきます。

当然ながら勢力拡大の過程では、他のプレイヤーとの競合が発生。これに対しては直接攻撃での他のプレイヤーの影響の除去、穏便に隣接からの自派影響の移動、著名人カード自体の入れ替え、などのアクションを駆使して抗争が繰り広げられます。

また各種アクションに使用するリソースである「好意」トークンも著名人の属性に対応した6種類が存在します。この好意トークンの生産には自派や手札の著名人カードが使用され、対応する属性のトークンが得られます。また「インフレンス」で影響トークンを配置する場合には、目標の属性に対応した好意トークンが必要となりますので、同属性の人脈であれば勢力を広げやすいという構造となっています。「職場の〇〇さんんに面白そうな会合に誘われたんだけどさぁ」

ゲームの終了は指定数のイベントカード登場がトリガーとなる可変ターン制。この場合は各属性ごとに最大のロッジに配置している影響力の合計値が得点となります。職能別の最大ギルドの議席数が得点となる格好です。

またゲーム終了条件としては、「陰謀」カードの条件を2件達成する満たすことによるサドンデス終了も設定されています。基本的には「カード5枚以上のロッジに影響トークンを3個以上置く」といったロッジでのマジョリティ支配に関係するものが中心ですが、中には「薔薇十字団メンバーの著名人6人に影響トークンを置く」「マップの上辺から下辺まで連なるロッジを作る」といったものも。またゲームに登場する陰謀カードは、各プレイヤーに秘密裏に配布された1枚のほかは、公開共有された2枚のみ。2件の陰謀を達成するためには公開陰謀カードにも着手せねばならず、双方を達成するのは容易ではなさそう。

さらにプレイに使用する著名人カードは、毎手番ターンに手札上限まで補充されるとはいえ、上限自体が4枚と少な目。このカードはマップへの配置のほか、抗争時の攻防の戦闘力や、追加アクションやターン限定効果発動のための特殊効果にも使用され、やろうと思えば1手番ですべてのカードを使用するコンボも可能です。しかし先を見据えて影響下の著名人と接続してロッジを形成できるカードはキープしておきたい。防衛用に戦闘力高めのカードも押さえておきたい……となると悩ましい。少ない手札で何を切り捨て何を残すか?というジレンマには独特のプレイ感があります。

というわけで「PAX」シリーズの要素は?と言われると謎ですし、珍しく背景開設が一切ないため(カードのフレーバーテキストのみ)何をやっているのかわかりにくいという問題はあります。とはいえ同シリーズとしてはかなり手軽なルールで、正面からバチバチ殴り合うというプレイ感が新鮮な小箱作品でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本作にはメインゲームのほかに、コンポーネントを流用した追加ゲーム2作のルールとコンポーネントが収録されています。入手した方、箱を隅から隅まで調べることをお勧めします。

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