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Battlegroup Clash: Baltics : 山田会 2026/02/15

山田洋行氏が今期最大の話題作(N=2)を解読したと聞きつけ、今週は英国産エストニア方面に転戦してきました。

Battlegroup Clash: Baltics - Sapper Studio ()

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英陸軍向けに開発された教育用ウォーゲーム「Battlegroup Wargame System (BGWS)」をベースに、審判を廃するなどホビー向けに簡略化した現代戦術級ウォーゲーム。本作のデザイナーであるJames BuckleyはPALANXやNuts! Publishingでの開発経験もあり「Purple Haze: Tunnel Rats」という既存作もありますが、本格的なホビー向けウォーゲームは本作が初作品。リリース元のSapper Studioも、本作のために立ち上げた個人ブランドのようです。

ウォーゲームとしての概要は、複数ステップを持つ小隊ユニット(一部分隊)、15-30分ターンの陸戦戦術級。NATO軍とロシア軍のユニットが収録されており、シナリオではエストニアを想定した戦場で中隊から大隊規模の部隊を担当します。縮尺1万分の1マップ(100m=1cm)には1kmごとのグリッドが切られてはいますが、これは後述の命令などで目標を指定するための目安で、マップ上の位置関係や移動はミニチュアゲーム的にゲージで管理されます。

戦闘システムはユニットの火力と練度(TQ)差をベースにした戦力差CRTの射撃戦闘と、兵数ベースの戦力比CRTの突撃戦闘。ユニットはいくつかのグループ(TGP)に編成されてシナリオに登場し、両陣営がTGP単位で交互に活性化。活性化したTGPでユニットごとに移動や射撃といったアクションを実施。すべてのTGPが活性化したらターン終了で、臨機射撃以外に特殊な割り込みや追加活性化はなし。このあたりはいたって普通のシステムです。このシンプルな基本ルールに、士気と命令が追加された標準ルール、弾薬や両陣営のドクトリンが追加された上級ルールの三部構成となっています。

◆命令システム

本作の第一の特徴が、標準ルールとして実装されている命令ルールです。本作では登場する各TGPについて、シナリオの第1ターンから最終ターンまで、すべてのターンの命令を事前に作成しておかなければなりません!例えばNATO軍の守備する橋をロシア軍が奪取するというシナリオ1(全5ターン)で、ロシア軍の助攻を担当するTGP2(機械化歩兵中隊)について、今回のプレイでロシア軍が使用した各ターンの命令例はこのようなものでした。

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T1-T2:グリッドE23/N21(橋への街道の側面に位置する雑木林の背後)へと機動(Manoevre)。
T3:E22/N22(上記の雑木林)の敵部隊を攻撃(Attack)。
T4:橋の手前側の敵部隊を攻撃。※橋の奪取が任務のTGP1(機械化歩兵中隊)には、T3までに橋の手前側の街道を打通し、T4には橋の対岸への攻撃命令が与えられている。
T5:橋の対岸を攻撃して橋を奪取(Size)。※TGP1の後詰め。並行して進出するTGP3が橋の手前を守備(Secure)する予定。

上記の例のように、マップ上の各TGPの行動が連携するような命令が求められるのはもちろん、この命令は砲兵やFPV(攻撃用ドローン)などの支援アセットについても作成しておく必要があります。このシナリオでは、主攻であるTGP1の進出に合わせたグリッドを砲兵中隊が、助攻のTGP2のルートに沿ったグリッドをFPV部隊が支援する命令例が収録されています。

プロットされた命令はターン開始時の命令フェイズに変更し、以後の命令を書き換えることもできます。これは自動的に成功しますが、該当TGPは丸1ターンの再編成(1回休み)が必要となり、次の命令が有効となるのは翌ターンからとなります。シナリオはいずれも5-6ターンの設定ですので、1ターンのロスはかなりのペナルティです。また命令変更が実施されるごとに、予定変更の通信が行き交うことを反映して敵陣営は後述の電子通信(ETX)マーカーを受け取ります。

さらに上級ルールでは両陣営のドクトリンを反映したルールが導入され、ロシア軍には「成功の可能性がある限り当初の命令を変更できない」という制限が課せられます。対するNATO軍には、ミッションコマンドを反映した「1ターンに1回分の命令変更に限り、再編成なしで即座に発動できる」という柔軟性が追加されます。シンプルですが非常に効果的なルールです。

◆電子戦システム

そして命令ルールと並ぶもうひとつの本作の特徴が、先のETXマーカーをはじめとする戦術レベルでの電子戦のルールです。本作では、敵が命令変更や砲撃等の支援アセットを利用した場合、敵の通信や電波源の探知を反映したETXマーカーを受け取ります。特に大きな電子通信が発生するのが、支援アセットを命令外のグリッドに対して使用する場合で、通常の1枚に代えて3枚のETXマーカーを獲得します。予定外の目標への攻撃を要請すること自体は可能ですが、打ち合わせのために通常以上の電波が飛び交うわけです。

こうして獲得したETXマーカーは、各ターン開始時の電子戦フェイズにおいて両陣営の枚数が比較され、枚数の多い側は2枚、劣る側は1枚の電子戦チットをランダムに受け取ります。この電子戦チットには主に支援アセットに対する強化と妨害の効果が記載されており、「ペナルティなしで命令外の目標を攻撃可能」「間接射撃に有利/不利な修正を追加」「敵の間接射撃をキャンセル」など、効果に応じて随時消費されます。支援アセットのために飛び交う電波を妨害、利用して優位を得るわけです。

さらに電子戦フェイズには、ETXマーカーが同数の目標マーカーと交換されます。こちらは直接射撃に有利な修正を与える使い捨てのマーカーで、自軍の射撃の際にブーストとして消費されます。「N23/E24の森に不審な電波源がある。念入りに制圧射撃を打ち込んでくれ」というわけです。

◆段取り八分

このように本作では実際のプレイを開始する前から、登場する各チームが時間的にも空間的にも連携した計画が求められます。そして予定通りに状況が展開している場合は問題ありませんが、ひとたび予定の修正が迫られると、命令変更や予定外の砲撃に伴う電波が飛び交い、これを利用した敵の攻撃がさらなる追い打ちをかける、という構造となっています。スケールや表現こそ異なりますが、プランニングを重視するスタイルは「Urban Operations」や「Littral Commander」などの専門家向けをうたった先行作にも共通する視点です。こうしたホビーゲーマーとは異なる視点を体験できる、まさにウクライナ以降の現代戦術級陸戦ゲームという内容でした。

 

◆AAR - A Bunp in the Road

今回は山田洋行氏のインストでルールを読み合わせしつつ、橋の攻防が焦点となる前述のシナリオ1を対戦しました。本シナリオには両陣営にサンプルとしてフルセットの命令が記載されており、プレイではこれをそのまま使用しています。感想戦でも話題となりましたが、初見でこれを書けと言われてもまったく書ける気がしませんので、初プレイでは素直にサンプルを使用することをお勧めします。

分担は街道上の橋を守るNATO軍軽歩兵中隊を山田洋行氏が、攻めるロシア軍増強機械化歩兵中隊をN村が担当。ロシア軍は機械化歩兵中隊が152m砲兵中隊とFPVに支援されており、戦車を欠く消耗したBTG分遣隊という格好です。

前述の命令例のように、ロシア軍は橋に直接アプローチするTGP1と、それを側面から支援するTGP2/3の3隊に分かれて前進。ここで助攻のTGP2/3は軽微な損害で側面に進出しますが、肝心のTGP1が並行する川の対岸からジャベリンATMの伏撃を受け、街道を掃討する前にすべての車両を失うという大損害を被ります。幸か不幸か歩兵の損害は軽微だったため、TGP1は徒歩で攻撃を続行。ちなみに徒歩となったことで、街道を外れて川沿いの雑木林から橋に直接アプローチできる守備の穴もあったのですが、ロシア軍ドクトリンにより却下されました(街道を打通するという当初の命令の達成は徒歩でも不可能ではないため、命令変更は認められない)。

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とはいえこの「ギリギリ予定通り」の攻勢が続いていたため、電子戦ではロシア軍が終始優勢を獲得。特に「自動的に先行を獲得する」チットを2ターン連続で獲得できた効果が大きく、側面の雑木林のNATO軍前哨拠点を乗車状態のまま駆け抜けたTGP2/3が、むしろこちらが主攻となり橋正面の交差点に向けて下車突撃を開始します。

こうしてTGP2/3の連続攻撃により橋の手前側は掃討されたのですが、このタイミング(T4)で橋の対岸に進出するはずのTGP1は、ようやく徒歩で橋に到達するかという状況。翌最終ターンのロシア軍の渡河攻撃を待たず、NATO軍が橋を爆破することが確実となったため、今回はここで協議終了としました。ロシア軍は終始優勢にNATO軍前衛陣地を掃討したものの、硬直したドクトリンが仇となり橋を奪取する好機を逃した、という格好です。

ミニチュアゲーム的な処理は好みの分かれるところですが、感想戦ではシンプルな基本システムに、キモとなる命令と電子戦を乗せたシステム自体は非常に軽快。砲撃に対する機械化歩兵の優位性、遮蔽物を盾にした軽歩兵の伏撃とATMの脅威、ドローンの脅威と限界など、まさに伝え聞く戦訓が織り込まれた内容には両プレイヤーとも好感触でした。

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