« 明るい夜戦:第三次ソロモン海戦第一夜戦 : 山田会 2026/01/18 | トップページ | The Mannerheim Line Campaign : GCS 2026/02/01 »

Chicago '68 : GCS 2026/01/31

2026年のゲームサークル坂戸は、昨年の積み残しゲームより。

Chicago '68 - The Dietz Foundation ()

舞台はベトナム戦争への反対運動と公民権運動を背景とした1968年のアメリカ、シカゴ市街。大統領候補を決めるアメリカ民主党党大会が開催されている同市に、反戦候補の指名と社会変革を求める数千人のデモ隊が集結。これに対して強硬派の市長が警察や州兵を動員して厳戒態勢を敷いた結果、抗議運動は警察との激しい衝突へと発展。「警察による暴動」と評される凄惨な事態を招いた……というシカゴ暴動をテーマとしたボードゲーム。「権力側」と「デモ隊」の二項対立を軸に、2人対戦の基本ゲームに加えて、デモ隊側のソリティアと協力ゲーム、両陣営を2人で分担したチーム戦の各モードが収録されています。

C68_2026013106a

このシカゴ暴動をテーマとしたゲームとしては、Dunniganの往年の名作「Chicago, Chicago!」(SPI, 1970)が存在しますが、ルールブックの解説によると本作は同ゲームの史家改造版を源流として、現代的なユーロゲームのメカニズムで政治的な側面を拡張して再構成したものとのこと。このデザイナーであるYoni Goldsteinは、商業作品は本作が初の作品ではないかと思われます。本職は映像作家だそうで、個人サイトがこちら()。

ゲームシステム

本作にはシカゴ市街を模したマップが用意されてはいますが、勝敗の争点は街路の物理的支配ではなく「誰が歴史の語り手になるか(後世で好意的な評価を受ける)」という政治的な駆け引きにあります。そしてこの駆け引きのプレイヤーとなるのがふたつの陣営と四つの派閥。本作のプレイヤーは、現状状維持を目的とする権力側(Establishment)と、変革を訴えるデモ隊(Demonstrators)をそれぞれ担当。そして権力側は「市長」と「シカゴ警察」、デモ隊側は「MOBE(ベトナム戦争終結のための全米動員委員会)」と「イッピー(青年国際党)」のそれぞれふたつの派閥(および対応するアクション)を担当します。

本ゲームの各ラウンド(ある日の昼間または夜間の半日)は、大きく分けて2つのフェイズで進行します。各ラウンド最初の「指導者フェイズ」では、市長とイッピーが交互にカードをプレイします(各3枚まで)。 ここでは直接的な武力闘争ではなく、市長はあの手この手の鎮圧手法を準備する一方で、イッピーは世論に訴える歴史的パフォーマンス(〇〇エリアを占拠せよ、等)である「ストリート・シアター」を準備するなど、両者とも次の街頭作戦への下準備を整えます。

続く「実働部隊フェーズ」では、MOBEとシカゴ警察が交互にカードをプレイします(各3枚まで)。この両者のカードプレイでは、マップ上のユニットの移動や、デモ隊と警官隊の衝突である「クラッシュ」が発生します。そして本作の特徴は、「Chicago, Chicago!」やその後継者であるMrandaやTrainの「ネットウォー」シリーズ同様、マップ上の勢力の過多が必ずしも勝利に直結しないということにあります。ゲーム内のすべての行動は、以下の2種類の勝利条件トラックに関連付けられています。

「代議員」(Delegates)による「政治的勝利」

市長の主な目的は、民主党大会を円滑に進め、戦争推進派の大統領候補を指名させることにあります。市長が「戦争機械」などのアクションを行うことで「代議員トラック」に推進派支持のキューブが配置されます。これがトラックの過半数を占めれば権力側の政治的勝利です。対するデモ隊は街を混乱させることで、このプロセスを遅延・妨害することを目指します。またデモ隊は検挙されて「クック群拘置所」エリアに送られたデモ隊ユニットが獄中からアピールすることで、まだ態度を確定していない代議員プールに戦争反対派を増やすこともできます。

「メディア露出」(Exposure)による「ナラティブの勝利」

街頭デモとその排除、検挙に相当するマップ上での「クラッシュ」を優勢に成功させた場合、エリアの注目度に応じた得点が「メディア露出トラック」で増減されます。またイッピーが提示されている「ストリート・シアター」の条件を満たした場合、ボーナスとしてデモ隊側へとメディア露出が進行します。そしてゲーム終了時にいずれの側にこのトラックが傾いているかにより、どちらの陣営が世論を味方につけた歴史的勝利をおさめたかが判定されます。

さらに警官隊が過剰な暴力や鎮圧手法を行使した場合、社会の「不安定化」が進みます。この進行は権力側にとってアクションコストの増大を招くだけでなく、デモ隊側へとメディアの注目を集めることになります。

こうした構造から、権力側は秩序を維持するために警察を動員しなければなりませんが、力を使いすぎるとメディアに叩かれ、ゲームには敗北してしまいます。デモ隊は警官隊との衝突を繰り返すことでメディア露出を稼げますが、マップ上の様々なアクションの起点となるイッピーの「扇動者」がすべて除去された場合、街宣運動が継続できなくなったものとして即座に敗北するリスクを負っています。

このように本作ではシカゴ市街におけるデモ隊の闘争を起点に、民主党党大会の行方と、社会改革を求める世論の高まりというふたつの政治的な勝敗が争われます。そして改革派であるデモ隊側はこのうちの一方で勝利を収めればよいのに対し、現状維持を是とする権力側はこの双方で勝利を収めなければなりません。大きな権力と武力を持ちますが、それを適切に行使しなければ社会の支持は得られないという構造はまさしく、COIN(対叛乱作戦)の構造です。実際のプレイ感も、元ゲームである「ネットウォー」系列とGMT Gamesの「COINシリーズ」を折衷して簡略化したような感触でした。

今回は馬場夫氏のインストでのお試しプレイを開催。結果は鉄条網による街路封鎖を重視した市長の戦術が功を奏し、暴徒の適切なコントロールをメディアにアピールした市長が、市街中枢を守って権力側が逃げ切り……と思われましたが、終盤の第4ラウンドに鉄条網の破壊に関するルールに重大なミスが発覚して協議終了。参考試合となりましたが、プレイ時間90-180分という公称通りの手軽なプレイで21世紀版の「Chicago, Chicago!」を体験できそうなことは確認。とはいえテーマのマイナーさと膨大なユニークカードの言語依存度はなかなか厳しい、という感想戦となりました。猛者の参入をお待ちしております。「ピガススを大統領に!」

|

« 明るい夜戦:第三次ソロモン海戦第一夜戦 : 山田会 2026/01/18 | トップページ | The Mannerheim Line Campaign : GCS 2026/02/01 »

C68」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 明るい夜戦:第三次ソロモン海戦第一夜戦 : 山田会 2026/01/18 | トップページ | The Mannerheim Line Campaign : GCS 2026/02/01 »